250万円が安いか、高いか、

人生いろいろ/鳳仙花島倉家―これが私の遺言自動起床装置 (新風舎文庫)愛のパンセ (新風舎文庫)
 本を読むよりは書きたい人が多い。ブログを書くことも多少その気があるから持続するのであって、僕も他人事ではないけれど、やはり、文芸社新風舎関係のデータを荒ロムすれば、こんなににも「自己語り」したい人がいるんだと、その内面につけ込んでビジネスを立ち上げることは、それによって、本人たちが「癒され」、誰でも一冊の本は書けるということを実践出来た、そのことで、自分の生を生き生きとしたものに染め上げることが出来るのなら、それ相応の舞台装置は必要なのでしょう。
 ISBNコード、街の本屋。ネットで画像アップ。全国紙の広告面に紹介など、そんな装置が250万円なのでしょう。それを高いか安いかとの計算はなかなかムツカシイ。一応、leleleさんが250万円が一つのキーワードと書いているから、念のため、「新風舎 250万円」でグーグル検索したら、結構、ヒットしましたね。その内の三件だけ紹介します。これでも多量なデータです。
http://blog.livedoor.jp/shintaro1978/archives/50024126.html
http://oyanoyomuhon.hontsuna.net/article/1694216.html
http://yasai.2ch.net/bun/kako/972/972068826.html
 版型とか頁数とか、装幀とか、そういうことを大まかにして1000部数で計算しても100万円もかからないでしょう。だから、一部千円で売って完売すれば、とんとんという素人計算が成り立つ。でも250万円では大赤字。アマチャの書いたものを定価を1500円と表示しても親戚・知人ネットワークで売る場合は1000円で売らざるを得ないでしょう。1000円にするから10部買ってもらうとか、自費出版ならそんな工夫も出来る。でも協力出版ならそんな融通性もムツカシイみたいですね。
 名の通った芥川賞作家でも初版部数は3000部ぐらいでしょう。親戚・知人ネットワークを全く考慮に入れないで全く知らない人が買ってくれる可能性は数冊でしょう。昔、同人誌を発行していた友人が大書店でミニコミ、同人誌のコーナーがあってそこに置かせてもらい、売れただけでなく、読者から感想の手紙をもらったときは、その友人の歓びは尋常ではなかったですね、たった一人の読者でもいいのです。そんなことを思うと売れる売れないはどうでも良くて、とにかく見知らぬ人がお駄賃を出して読んでくれる出会いを求めているのでしょう。
 まあ、文芸系、自己史系でなく、内幕もの、社会告発書のようなノンフィクションものはもっと違った側面がありますね。内容によっては無名でも波紋を呼ぶかもしれない。
 僕の本屋体験では過去ログにも書きましたが、『ゆきゆきて、神軍』の故奥崎謙三自費出版?は強烈でした。

本屋で働いていた折、差出人奥崎謙三ダンボールが店宛に送られてきたことがあります。映画は87年製作ですからそれ以前です。開けると黒い装丁の本が何十冊とある。勿論注文したことのないものだし、奥崎謙三と面識もない。ただ、パチンコ玉事件で名前は知っていた。本のタイトルは『宇宙人の聖書』とある。ぱらぱらとめくっても難解このうえない。判読は僕には無理だと諦めました。さてこの面倒をどうするか、その詳細はもう忘れましたが、結局、レジの前にダンボールを置いて、欲しい人にあげました。しかし、今から考えると、全国の書店名簿を元に全く打診しないで、直に本屋さんに配達料は自分持ちで送りつける。その経費たるや膨大ですね、パンフレッドの類ではないのです。多分B6版?で300〜400頁はあったと思う。(手元に本がないので詳細なデータはわかりません)仮にチェックした本屋さんが千店だとすると、5、6百万円の経費はかかっているはずです。数年後、奥崎謙三は日本縦断の行脚で元上官訪問もかねてか本屋さん訪問もしたみたいです。某店長が会ってお茶したとのこと。「どんな人だった?」「いや〜あ、色々話を聞かせてもらったが、言っている事がなんとも理解しがたかった」

 しかし、その『宇宙人の聖書』が日本の古本屋で検索すると、なんと、8400円です。タダで配布したのですが、こういうこともあり得るのですね、ちなみに大阪府立図書館で検索するとヒットしました、1976年刊で出版社はサン書店です。ということは単なる自費出版ではないかと思う。1987年新泉社で再刊されていますね。彼にとって本は広報活動です。
 こんな風に図書館で資料として置いてくれるのは売れる以上に嬉しかったことでしょう。協力出版であれ、自費出版であれ、果たして図書館で置いてくれるかが信頼性のあるメルクマールになるかもしれない。思い切って250万円支払って出版したのなら、その本を持参で古本屋さんに値付けをしてもらうのもいいかもしれない。そうすれば、文芸社新風舎が古書業界でどのような扱われ方をしているのか、はっきりとわかると思います。
 僕は最終的に物の市場価値は本に限らず、質屋さんとか、古物商で目利きしてもらうのが一番だと思っていますから、ぴかぴかの自著を持って目利きをしてもらうといいと思います。まあ、引き取りを拒否される可能性が確実でしょう。
 まだ、ネットでユーズド商品としてアップするのがいいかもしれない、でも協力出版社の名前がマイナスのブランドイメージになってしまうことも計算した方が良いかもしれない。とにかく僕が薦めるのは自費出版ですね、一部ならここのはてなダイアリーで印刷・製本を受けつけていますよ。一頁あたり10円弱ぐらいでしょう。B6版のソフトカバーで500頁弱で5000円の見当です。一部が少なければ10部とか多少部数が増えれば一冊あたりは安くなります。リスクも少なくていいではないですか…。
 でも、プロとしてデビューする野心のある方は協力出版もいいかもしれないが、戦略としてそれがマイナスのキャリアになりうるということも冷厳に考えべきだと思います。むしろ、大出版社の自費出版か、無印良品のように出版社名が表に表れないで印刷会社だけ。保坂和志さんのグループが小島信夫の『寓話』を出版したような挑戦をするとか、別の戦略を考えた方がいいと思う。戦略としてマイナスの方策をとるべきではないでしょう。生きた金を使って下さい。
 付記:n-291さんが上の段落を引用してトラバして下さったのですが、それにちょいと付け加えます。マイナスのキャリアについてですが、デビューしたい方は版元の選択が非常に大事だということです。某氏から聴いたように本当に協力出版社系で書いたことが他の出版社で書くことの足枷になるなら、そのあたりを冷静に検証した方がいいと思います。僕は先月、外資系の医療保険クーリングオフしたのですが、多分、この契約もクーリングオフの対象にはなるはずです。
 とにかく「クールに…」
 何はともあれ実際に出版社訪問をすればいいですね、梅田にアンテナショップのようなものがあります。店名が「熱風書房?」、「ホットに対してはやっぱクールに…」
 少し散歩コースから外れているが今度、お邪魔ムシしましょうか、
http://www.pub.co.jp/osaka/access.html
http://www.pub.co.jp/osaka/index.html
しかし、文芸社の人生いろいろ大賞って、唖然です。
みんながそれで、ナットク、癒されているなら傍でとやかく言う必要がないかもしれない。
人生いろいろ賞 - 文芸社まさに色々でいいか…
 新風舎で検索したら僕の好きな辺見庸の文庫がありました。谷川俊太郎もある。協力出版社って調べれば調べるほど奥が深いみたいですね(苦笑)。

未体験の美味しさ・面白さ

 ブックオフで買っていた小林カツ代の『実践 料理のへそ!』の冒頭。

 一人で食べる贅沢、というのがあります。
 すわ、炊きあがった! という電器釜の蓋を開ける。一気に湯気が上がる。すかさず、その炊き上がったご飯の表面をしゃもじでビューッと取る。削ぐように。ちょうど、子供の描く「ワァー」と笑っている口に似た形に取れますよ。これを茶碗によそい、塩を振って食べる。他にな〜んもいらないくらいに美味しい。あとは、底からほぐしておく。

 丁度、御飯を炊いたから、実践したら、びっくりしました。口の中にふぁ〜と柔らかいものが拡がり、確かにこれが米の味なんだとナットクした未体験の美味しさでした。瞬間芸ですね。食卓に持っていってゆっくりと時間を置くとダメです。だから台所で料理を作る人が盗み食いの早業で食さないとこの美味に出会うことは出来ない。実践してみたら如何ですか、勿論、電器炊飯器でなくてもいい、百円コーナーで売っている土鍋でもOKだと思う。塩はいい塩をつかったらいいかもしれませんね。
 保坂和志さんの保板でYOUTUBEの『茶目子の一日』が紹介されていました。これをクリックしたら、これも又、未体験の面白さでした。