僕は自堕落な猫になりたかった

立川談志 古典落語特選 1 [DVD]悪の華 (新潮文庫)ディアーナの水浴
まず、てるてるさんが、僕の下のコメントで書いたことに対して、ミクシィの方でマイミクSさんが書いたことをコピペ。
>痛切な叫びを投げつける先が、どうして「バックラッシュ」という本を書いた人達なのかが、疑問なんです
と書いておられたのを読んで、「うん、そりゃ、そうだ」とおもったのですね。で、そのあとやはりてるてるさんが、
>別に、生活のために強者女性と結婚しなくても、生活のために、強者男性のなかから気の合いそうな人を選んで友情に基づいた共同生活を送ればいいんではないでしょうか? なんで女性に要求するの?
と続けておられるのを読んで、「この赤木さん、女と暮したいということなんで、生き延びたい、というだけじゃないんだわね」と、きづいて、あ、そうか、とおもったわけです。
単に社会のしくみ云々ではなくて、個人的な性の問題が、大きく関わっているのですね。
そして、今朝みたらば、serohanさんのするどい指摘。
>でこの「弱者」の立ち位置が、いかに有利に働くか、知って使っている
>自称「弱者」による、言論的暴力の標的になったことのある人間ならば、出来るだけ避けて通りたいと、感じさせるものがあるのではないでしょうか。それら自称「弱者」は標的を決めると、徹底的に喰い付いてきますし。但し、劇場型なので、観客がいないところでは議論をしない
この記述には、うわお・・・なるほど、と感心するとともに、私が赤木さんに対して、なんとなく気持ちわかるなあ、とこそ思っても、それほど不快感を感じなかったのはなぜなのだろう、と、自分のことを振り返ったりしましたよ。
>女の人が「男を慰めたり支えたり」することを生き甲斐にしているんではないかと、思っている男性は多いと思いますよ (これは僕が書いたことです)
と話されていますが、「男を支える女は偉い」という発想が、無意識に私にもあって、赤木さんのような「弱者男性」に、ついつい同情してしまうところが、これもやはり無意識のうちに、わたしの中にあるんでしょうねえ。
だって、自称「弱者女性」には、あまり共感することはできないのだもの。
これで大金持ちだったら、ガエルくんみたいなかわいい「弱者男性」を、いくらでも養ってあげちゃうかもね。
って、まず前提が完全にペケだから、可能性ゼロだけれど(笑)。
いつだったか、テレビのトーク・ショーで、トリュフォーの最後の恋人だったファニー・アルダンが、面倒をみているという若いピアニストを紹介していましたが、会場の男性がみんな、「おお、トリュフォーにそっくりな若者ですねえ」とずいぶん興奮していましたよ。
私はといえば、その番組を見たあとで、たまたま用事で電話をかけてきた、やはりおばさんである友だちと、かっこいいねえ、ファニー・アルダンみたいに甲斐性あるとねえ、などと話したことでした。
そういうことなども思い出してしまいましたわ。
◆僕はSさんの話で、思い出したことがある。書店員時代、後輩の女の子でプロのジャズ歌手を目指していましたが、お茶したおり、「私ね、結婚したいと思ったことはなかったなぁ、ただ、お妾さんになりたいとは思っていたなぁ、芸者もいいなぁと思っていた」、すごくナットク出来ました。ただ僕は芸事はからっけしダメで、映画幕末太陽伝フランキー堺演じる落語でもお馴染みの居残り佐平次になれたくてもなれない。
それで、僕は猫になりたいと思っていた、どんな猫かボードレールの猫です。『悪の華』(岩波文庫)所載の「女の巨人」鈴木信太郎訳より(一部当用漢字で書き直しました。)

奔放な奇想に駆られて 大自然が、毎日/怪異の子どもたちを 懐妊してゐた時代なら、/俺は、女王の足もとに淫らな猫が戯れるやうに、/巨大な若い女の傍で、遊び暮らすのを好んだらう。
女の肉体が魂と一緒に 花を満開し、/そのすさまじい享楽で自由に育って行くのを見、/眼に漂ふ潤んだ霧で 陰鬱な恋の焔を/その胸に懐くかどうかと 占ふのを好んだらう。
その雄大な形態を 俺はゆるゆると遍歴し、/その法外な両膝の斜面の上を這ひ廻り、/また、時をりは夏の候、有毒な日の光を受けて、
草臥れて 草原を覆うて女が横臥はる時、/山の麓の太平な部落のやうに、俺は その/乳房の蔭に のんびりと 眠りこけるのを好んだらう。

「男の巨人」ならダメなのです。猫にはなりたくないですね、これは、性の問題だと思う。もし、なるとしたら、犬でしょう。犬に失礼かな、狩りの女神アルテミスの犬になるのはいいかもしれない。そう、ピエール・クロソフスキーの『ディアーナの水浴』で水浴するディアーナ(アルテミス)を盗み見たことで鹿に変えられ、猟犬に噛み裂かれるアクタイオーン。あの猟犬です。性のエネルギーって概念化出来得ないものなのではないか。
参照:『バックラッシュ!』非難のこと、そして「弱者」のこと - 双風亭日乗はてな出張所