金持ちより人持ち/男は愛嬌?
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いわゆるその筋系の人(上野さん自身が冒頭そんな言葉をアイロニカルに使ってはいました。)が大半のような観客席ではありました。『おひとりさま〜』は75万部と上野さんが、下ネタで昔、48万部も売った『スカートの下の劇場』の倍以上も伸びる動きで、上野さんも「まさか、下ネタより以上も売れるとは思っても見なかった」と驚きを隠さなかったですね。
上野さんの履歴を知らなかった人が購入した事情があるから、こんなにも売れたのでしょう。そういうこともあって冒頭、「本を読む前から私のことを知っていた人?」って挙手を促したら殆どの人が手を挙げていました。
やっぱし、筋者たちかぁって、上野さんは苦笑いしていました。
でも、実はこの本を購入してから上野さんが何者かを全く知らない老母に読ませると評判が良くて、今老人仲間が回し読みをしているのです。「老後の戦術本」になりますからねぇ。特にお婆ちゃんの…、そんな本だからこそ、売れているのでしょう。
ジュンク堂のトークには、そういうお婆ちゃん達は来ていませんでしたが、来ていたら面白かったですね。
ところで、話の中で吉武輝子さんが「金持ちより人持ち」という書評してくれたことが嬉しかったと言っていました。質問タイムで「でも、やっぱそこそこのお金が欲しいです。そこそこのお金があるから、人持ちと言えるんでしょう」、「お金しか信用できない」っていうシステムの中で生きながら、「金持ちより人持ち」とは、ナイーブには中々言えない、癒しモードにはなりますけれどね。癒しよりは喧嘩モードの上野さんらしからぬ言葉で、老人仲間で人気のある日野原重明さんの言葉ならナットクします。と言いたかったのですが、女の方のように度胸がありませんでした。サイン会で、「老老介護進行中」のオヤジですと上野さんに挨拶するのが、やっとこでした。
この本は一言もフェミニズムをいう言葉が使われていないのです。そのことも大ベストセラー(進行中)になっている要因のひとつかもしれません。でも、フェム魂は燃えたぎっている。エピソードの一つとして、珍しく、男性からお褒めの読書カードが来たのですが、その男性読者が本書の最後の三行に「かちん」と来ました、重版するときはこの三行を抹消していただきたいとのリクエストがあったということです。
なに、男はどうすればいいか、ですって?
そんなこと、知ったこっちゃない。
せいぜ女に愛されるよう、かわいげのある男になることね。ー最後の三行よりー
勿論、上野さんは、抹消するつもりはありません(笑)。男は厄介ですね、重荷を背負い込んでいる。荷物を放り投げることができないのでしょうか。せめて、女の人に頭を下げて荷物を手渡す脱力系の選択があってもいいかと思いますがねぇ。アイデンティティの問題にかかわってくるのでしょう。
まあ、僕はこれからの処世(余生)を「女は度胸、男は愛嬌」を心静かに実践してゆくつもりですから、逆にこの最後の三行は拍手喝采したいものです。
行き帰りの電車の中で本田透さんの『喪男【モダン】の哲学史』を読みましたが、予想外にオモロイ。読みながら笑ってしまいました。
非モテ系の喪男ではなく、「モテ系の喪男【モダン】」として生きることがあってもいいと思うよ。フーテンの寅さん、釣りバカ日誌のハマちゃんは、そういう上野千鶴子に評価される「かわいげのある男」だと思います。
- 作者: 本田透
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/12/20
- メディア: 単行本
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