おばあちゃんの「独りが一番!」

毎日新聞の連載記事『男子禁制!!ロッカールーム』(篠田節子「メリー・ウィドゥたちの暮らす町」を読んでいたら、前日に紹介した「女性と貧困をほえる!」のチラシの頭にちいさく『「女」にあまえるな!』と書かれていたが、そのことと通底していると思う。
01年のDV防止法が施行後、裁判所が保護命令を出したのは08年度では2534件。どんどん増えている。接近禁止などの保護命令が出るのですが、6ヶ月でしょう。期間内に違反がなければ、裁判所は再度の命令を出さない傾向が強いみたい。6月23日に高知で起きた民家・火災事件もDV夫の無理心中(毎日新聞6/24)かと言われているが、基本的に一人でも生きていける社会基盤の構築が本当に大事だと思う。
僕の暮らしている町ではひとり暮らしの老人が多い。特に老婆が目立つ。老母の通っているディサービスでも近くに子ども達が住んでいるにもかかわらず、ひとり暮らしが多い。
最初、僕は年寄りたちが子どもや孫たちと同居したいのに仕方なくひとり暮らしをしていると思っていたが、むしろ、本音のところは、この記事で、とりのなん子さんがおばあちゃんのイラスト入りで「いい年になったらグダグダのぼんやりでいいんじゃない?」で書いているが、そういうことなんだと思う。
孫の子守りも大変なのです。時たま孫に会って遊ぶのは大歓迎だけれど、公園、買い物に連れて行ったりするのは足腰が弱いと冷や汗もののアクシデントがしょっちゅう起こって「ぼんやり」なんて出来ない。お爺さんもいらっしゃると家事万端を手伝ってくれるお爺さんならともかく、そんなジジィは例外でお婆さんは「のんびり、ぼんやり」出来ない。
老母のカラオケ仲間はアラエイティーのひとり暮らしのお婆さんたちがメインなので、間接的に色んな本音を聞く機会がありますが、やっとひとりになれたから、自由に気儘に遊びたいと思っているみたい。そのためには、独り暮らしの出来る年金を始めとした社会基盤が充実していなくてはならない。今のところアラエイティーのおばあちゃんたちはある程度満足していると思う。東京時代、巣鴨通りに良く出かけたが、「のんびり、ぼんやり」出来るストリートでジジィ、ババたちは元気が良かったですね。出会いを求めて遠くから来ている人もいましたね。
ジジィ、ババの原宿通りでした。
問題はこれからジジィ、ババになる若い人たちでしょう。今から政治問題に関心を持って社会システムを変えて行くアクティヴな動きをしないと益々ジリ貧になると思う。だけど、やはり世代別の選挙の投票率を見ると若者よりは年寄りの方が高い。世代論を展開したくないけれど、若者の方が年寄りに比べて当事者意識が少ないのでしょうか。この社会に生きている強度が希薄なのでしょうか。他人事ではないのです。政治的パワーを自ら身につけることでしか、変わらない。まずは、それぞれが、それそれの当事者意識を持つことから出発するしかない。

ある年寄り曰(いわ)く「ここじゃあよ、嫁の機嫌を損ねると、生きていけないさ」
 ドラマや中年漫画誌の中には、子供世代が葛藤(かっとう)の末に、親を引き取る心温まるハッピーエンドが登場する。しかし現実の生活はエンドレスだ。同時代を生きてきた友人知人やご近所に別れを告げ、仕事や家事のびっしり詰まったトゥードウーリストや、長すぎる将来を抱えた子供・孫世代に囲まれて暮らす、その孤独は、実際のところいかばかりのものか。
 独居老人という言葉に、我々子供世代は、激しい不安と後ろめたさを感じる。独りでなくても老人世帯、というだけで、心配でしかたない。うっかり孤独死なんかされたら世間体が悪くてたまらんわ、という本音もある。
 だが、「後家の青天井」という言葉のあるくらい家父長的気風の残されていた地域で、メリーウィドゥたちは言い切る。
 「独りが一番!」
 体力が衰え、持病や健康不安やトロくなった頭を抱えてはいても介護までは必要ない、という人生の時間は案外長い。若い者に管理されるなんぞまっぴら、面倒見られる代償に衣食住、小遣い稼ぎ、恋愛、集会結社、諸々の自由を奪われてたまるか、という気概。あるいは「気兼ねなく暮らしたい」という切ない望み。
 そうした意気軒昂(けんこう)だが不安を伴う自立生活のフォローこそ、必要なのではないか。が、ひとたびコトが起きれば、寝たきりの年寄りさえ永遠に生かせと言わんばかりの勢いで、自治体や施設や職員が叩(たた)かれる。結果、絶対安全オーバースペックな設備やシステム、完璧(かんぺき)マニュアルが出現し、予算はパンクし必要なところに人も金も回らない。
 メリット、デメリットを秤(はかり)にかけ、少々のリスクは選択した本人の自己責任として、地域にフィットした必要最低限なツールをフレキシブルに導入できないものか。たとえば商業施設と提携し、ショッピングモールと病院、駅などを繋(つな)ぐミニバスの運行。
 たとえば住人にとってもオーバースペックな土地付き一軒家と地域内の集合住宅とのケア付き交換。(寒暖の差の少ない集合住宅は高齢者にとって住みやすく、規格化された内部はへルパーも動きやすい)ー住宅 - 毎日新聞よりー

長屋、町家は独居老人にとって最適なロケーションだと思う。
東京時代、僕の住んでいたアパートは独居老人たちが住んでいたが、総合病院は100メートル以内。スーパーは隣。銭湯も100メートル以内。中央図書館は数分。便利がよくて住みやすかったです。