森崎書店の日々


空想書店『書肆紅屋』さんの記事を読んでいたら、
http://www.morisaki-syoten.com/
森崎書店の日々』が紹介されていた。
未読なのですが、映画化されたのですねぇ。大阪ではテアトル梅田で12月に上映される。神保町の古本街を背景に<働く人々>を前景化した映画みたい。
http://www.ttcg.jp/theatre_umeda/comingsoon
ところで、大阪・天満橋エル・ライブラリーで、
「働く姿を描いて感動的なお奨め映画」の投票を募ってるが、
古い映画が多いねぇ。『森崎書店の日々』は旬な映画で、こちらのエル・ライブラリーのイベントに推奨したいです。
僕的にはこの映画からリンクして田中裕子、岸部一徳が出演、緒形明監督『いつか読書する日』を思い出しました。牛乳配達、スーパーで働く女を黙々と演じる田中裕子と岸部一徳のからみが素晴らしい映画でしたね。この映画も推奨。

武田徹さんの言う「多感な老人」たちがどんどんこれからあらわれる気がするねぇ。
だけど、僕は吉本隆明の「老いの流儀」で多分収まる。
本の通販ストア - 本、雑誌の通販ならhontobk1書評フェア「老人という宝石』

この本は次回作の助走です。
栗山光司
2002/12/16 11:52:00
評価 ( ★マーク )
 =人間の生涯で大切なことは二つしかない。一つは老人を経済的に安定させて、少なくとも世話をしてくれる人を雇えるくらいの余裕をもたせる。もう一つは妊娠した女の人に十分な休暇と給料を与えて、十分な子育てができる。この二つができたら歴史は終わり。あとはたいしたことはないし、「どうでもいいよ」ということになると思います。そういうことをやってくれる政党とか政治家が出てきたら、万々歳というべきでしょうが、今の段階ではそういう可能性な見えないですね=(109頁)
 私は大正生まれの老母と同居しているが、足腰は弱いものの口と頭は達者で私はボケ役、老母はツッコミ役と、真正面からぶっつからないで、微妙にズラして日々やり過ごしている。今のところ、吉本さんの言う「老人性うつ病」は老母に関係ない見たいである。互いに自分たちの流儀で自主管理する老人会(50人位)の仕事で飛び回っている。老母から平均年齢約80歳の老人達のやりとりを聞いていると、老いの過ごし方も結構な社会的能力を要求されるなあとため息する。先日も老人会の忘年会があり、老母はカラオケの司会を担当したが、ショーであるかぎり、曲名と老人の名前だけでなく、前口上があるのではないかと、どんな構成を考えているのかと尋ねると、「あんた、馬鹿ね、そんなことをしたら、収拾がつかなくなる。年寄りは平等に取り扱わなくてはならないのだ。誰それの紹介が長くなったと、えこひいきしたと、大変なのだから、いらん事は言わない方がいいの、名前と曲名だけ」。自分も年寄りでありながら、かような細かい老人同士の心理分析をしてくれる。老母にこの本を読ませたら、どのような感想を述べるだろうか。
 かって、筆者が『<老い>の現在進行形 介護職人、吉本隆明に会いに行く』(春秋社)で対談した三好春樹の『じいさん・ばあさんの愛しかた』(法研)や久田恵著『母のいる場所 シルバーヴィラ向山物語』(文芸春秋)を読ませたら、すごく好評であった。三好の本は専門家から見た現場の実際を老母を笑わせる程、ユーモアたっぷりに描写しながら、病院や施設でなく老人達に合わせたベットを始めとした介護用品の具体的な改善を提案するし、マニュアル通りでない個々の対処法を紹介したり、目からウロコの想いがした。久田のは父と息子と一緒に寝たきりの母を思い切って、民間の老人ホームに入居させて老人達と職員達の日々をドキュメンタリー作家の目で追いながら、娘の目で特に父親との関りを私小説の横糸で織り込み、見事な作品に出来上がっている。そんな全力投球をしたためか、新作の『大丈夫。』(主婦の友)では肩の荷が降りた日常を「パソコン修業」など、ユーモラスに書いている。
 しかし、吉本さんのこの本は老母を戸惑わせるであろう。だから、私だけに留めて置きます。吉本さんは地元の老人会に入らないのであろうか。入って自主管理の共同体である会の中で老人達と関り合い、【老体論】を書いて欲しい。構成者の古木杜恵によれば、「いずれ自我流のリハビリを極めることができれば、ぜひ『老体論』としてまとめてみたい」。と吉本さんはしきりにおしゃったらしいから、その意味でこの本は未完です。評価は保留します。是非とも、老母を始めとした老人達にススメたいので次回作『老体論』を書き上げて下さい。

もう8年前の書評ですねぇ。老母は90歳を越えてしまった。

老いの流儀

老いの流儀