保坂和志

http://www.daiwashobo.co.jp/web/html/hosaka/index.html
フリぺの富士ゼロックス『GRAPHICATION』178号が送付された。この雑誌は特集方式ですが、今回は「3・11以後の知を考える」
インタビュー記事で保坂和志の「科学は夢を見ない」がアップされていた。

 科学って、要するに愛とか希望とか夢の否定なんです。愛とか希望とか、そんな曖昧なものではなく、客観的に、正確、精密に世界を見ようというのが科学思想なんです。ではそこに何があるかと言うと何もない。それでその科学を人間社会にインターフェイスさせるために愛とか希望とか夢といった言葉を科学にくっつけた。そのためによくないことが起きてしまった。原爆をつくったのは「戦争に勝つ」という夢、希望を実現するためでしょう。
 科学は本来、希望や夢を実現するためにあるものではないんです。風が吹き、木の葉がそよいで、海に波が立っているのを、ただあるがままに正確に見ようというのが科学で、科学って、ただそれだけなんです。
 ぼくは小説家だけど、自分が関心をもっているものにしか気持ちが動かないし、気持ちが動かないと筆が動かない。それが愛なんだけど、ぼくのようなやり方は小説家にとって一般的じゃないんです。自分の興味のないものにも関心を向けてしっかり書きなさいって教えられ、そのように書く。だから通り一遍でつまらない小説ばかりなんだとぼくは言いたいんだけど(笑)。それって、実は科学のやり方なんです。(p21^22)

 僕の担当医は「夢も希望も語らない」。
 昨日先生が去年発表したばかりの論文「再燃前立腺癌に対してドセタキセル療法を行いchemotherapy holidayを導入できた一例」が「日本癌治療学会誌」に掲載されているのでネットから複写サービスの郵送申し込みをしました。夢も希望のなく淡々と読んでみますか。今日も血尿が出ている。
愛とか希望とか科学にくっつけたのがノーベル賞でもあるわけだ。もうじきウィリアム・フォークナーの『八月の光』を読了。