フェリーニ/#ダ・カーポ♪ゼロからスタート♪♪

『白いカラス』『21g』はみなさんの映画評を読んで面白そうだと思うが未見です。もうレンタルされていますね、でも、躊躇しているのです。筋立てが面倒そうで、筋立てに神経を使ったり、登場人物の見極めで(最近、特に人物の識別が困難になっているのです)、混乱したりで、結局、映像を楽しめなくなったりすることを回避したいという想いがあるのです。

刑事コロンボ』が好きだったのは、最初に犯人がわかっていたからであり、観る方は犯罪動機にフォーカスして人物相関図をマッピングして、もっぱら、彼らの心理描写を楽しむことが出来る。犯人探しをしなくても良い余裕が生まれるのです。このブログで紹介しているゴダールにとって筋書きなんてはそもそも、重要な意味を持っていない。それよりか、セリフのやりとり、モンタージュ(ってのも、カット、カットのやりとりである)、お互いにリンクし合って、次のシーンがアドリブのように転換をしめしたりすると、とても嬉しくなる(ゴダールには引用はあっても、脚本はなかったが…)。

だから、ネットで良く『ネタバレ厳禁』のコマンドがあるが、僕は『ネタバレ歓迎』なのです。ネタバレによって興味が半減するような映画はそもそも、端からパスしたいし、そうやって簡便な選別が働くので調法しているのです。それにネタバレしても興味を持って、映画を鑑賞する時は、大体の筋書きはわかっているから、じっくりと、落ち着いて映像を楽しむことが出来るし、最近はやっていないが、キネ旬あたりで、脚本を読んでいて、字幕なり、音声なりを余裕を持って見たり聴いたりして、結構、映画を全体として、五感を平均に脱力開放して、映画鑑賞出来たものです。ネタバレどころか、脚本を先に読んでしまうわけです。こんな鑑賞方法はダメだとお叱りを受けるかも知れないが、多分、僕も反論出来ないし、原則はその通りだと思う。しかし、僕個人の選別方式としては合理性を持っている。ここに画像紹介したフェリーニの『オーケストラ・リハーサル』は筋立てなんてどうでも良い。単にドキュメント風にオーケストラのリハーサル風景を撮影しただけである。しかし、ドキュメントではない。楽団員は本職の団員ではなくてイタリア各地の各層、世代を代表する風貌を重視して選ばれ、実際の演奏は本職のオーケストラが行い、インタビュー役でフェリーニ自身が声の出演をする。そして、団員たちは色々の言語、方言で、「ぴーちく、ぱーちく」喋る。ドイツ人指揮者が登場してリハーサルが始まるが、みんな勝手なことをして収拾がつかない。ポスト・モダンの状態なのです。どんちゃん騒ぎも始まる。指揮者はとうとう、キレて、控え室に引っ込み休憩。再開されても、マネジャーとユニオンの代表は口論したり、ピアニストはピアノの下でセックスをおっぱじめる。暴走はとまらない。と、突然、地響きを立てて壁が打ち破られる。巨大な鉄球が、隣の建物を解体していたのが、こちらまで、襲い掛かったのです。ショックのあまり、女流ハープ奏者は死ぬ。楽団員たちは沈黙する。

♪「ダ・カーポ」、指揮者がその沈黙を破る。「ダ・カーポ」♪、楽団員全員が一糸乱れぬ演奏を始める。NINO ROTAの『嘲笑』です。

フェリーニニーノ・ロータと企画した映画であったが、撮影直前にロータは急死し、この映画はロータに捧げられている。この映画は数回観たが見飽きない。今はサウンドトラック版CDを持っているがBGM替わりに聴いている。様々な各国語、音が飛び交い、ノイズでもあるのですが、不思議とキモイ。しかし、残念なことに廃盤になっているみたい。ダ・カーポはまさにゼロからスタートです。
参照:吟遊旅人の『シネマ日記』#『ヒューマン・ステイン』#『21g』
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