パーシー・アドロン/保坂和志]

バグダッドカフェ(1987年制作)を観ていなかったんだ。こうやって、ネットを始めてみて、本はともかく、映画のコメントが多いのに驚くが、観たことを忘れているか、未見の映画が多いのに改めて後悔します。このバグダッドカフェ保坂和志さんのHPで、観たくなり、アマゾンコムでクリックすると、五十件近くもアップされており、皆さんのレビューはどれもこれも、心のこもったもので、観たくなり、レンタルして今、観終わったのですが、女性映画監督、女性の友情を描いて(勿論、それだけでありません)、堪らなく良い心持になりました。美男、美女は出ないのに、このエロチックな感触はなんだろう。

ロサンゼルスからラスベガスに向かう道中で、旦那に平手打ち喰らわせて、砂漠の真ん中に降り立った太っちょのバイエルン出身のおばさんがドレスアップしたいでたちで、歩き始める。そして、バクダッドカフェというモーテルに行き当たり、そこの女主人(ブラック)と出会う。女主人は能無しの主人が出て行き、働かない子供達、孫の守、寂れて汚れ放題になってしまったモーテルの行く末を哀しんでか、悔し涙か、放心状態で涙を流している折、奇妙なドイツ女が汗を額に浮かべて、やってくる。ハンケチを取り出し、拭う。一方は、涙目を拭う。そこから、ドラマが始まるのです。

そもそも、今日、このビデオを観ることになったのは、保坂和志のHPで「『残響』(コーリング併載)中公文庫」の創作ノートをクリックして、読みたくなったのです。『コーリング』は名曲『コーリング・ユー』に由来してなく、むしろ、長崎俊一の映画『ロンドン・コーリング』に近いものらしいが、とにかく保坂和志自身、コーリングというタイトルを思い浮かべた時、ガッツポーズをしたほど、書くエネルギーを駆動する「コーリング」だったらしい。映画のテーマ曲コーリングユーが流れる『バグダッドカフェ』は『ストレンジャー・ザン・パラダイス』の次に来るのが、『バグダッドカフェ』で、その後にくる映画はないと保坂さんは絶賛しているのに観ていなかったのです。映画好きの人達にとって、定番なんだと、やっぱ僕は映画少年、青年でなかったことを再確認しました。そんな空隙を埋めるために今、観始めているのですが、遅かりしでですかね、ぼくの80年代前後の二十年間は、薄ら寒くなるほど鈍感で、鉄皮面の日々を送っていたんだと、失われた二十年を検証すると、バブル崩壊後の今が貴重な時代に思える。

EU少女のお母さんは是枝監督の『ワンダフルライフ』 を観てトールキンの短編『二グルの木の葉』を思い出したと言っていますが、この短編も未読です。『農夫ジャイルズの冒険ートールキン小品集』に収載されています。
コーリング・ユー ?バグダッド・カフェ ― オリジナル・サウンドトラックストレンジャー・ザン・パラダイス [DVD]バグダッド・カフェ 完全版 [DVD]残響 (中公文庫)