黄昏のピグマリオン

 ヘレン・メリルのアンニュイな歌にのって『ナンダロウアヤシゲな日々』が一週間振りに更新されていましたね。ぱっとロムすると本駒込図書館とときわ食堂が目に飛び込む。僕は王子の前は駒込に住んでいて本駒込図書館と、ときわ食堂は定番コースでした。1980年代ですね、今の本駒込図書館とときわ食堂と、そんなに変わっていない気がしてならない。ナンダロウアヤシゲさんがチャリンコでよく行くところみたいですものね。本駒込図書館はオーディオ・ブースが充実していてCDどころかアナログレコードも沢山ありました。映画の上映もありました。『日本の夜と霧』だったと思いますが、映画上映前か後か講演があり、図書館のトイレで朝顔に向かっていたら、隣にお洒落な背の高い紳士が連れションを始めました。大島渚さんだったのです。僕は急にヘンなことを思い出すもんですね(笑)。
 王子に引越してからも時々覗きましたが、傍らの池のある公園に色々な人たちがいました。気になったのは図書館の脇にブルーテントを張って自転車、雑誌の束を山のように積んで広いスペースを占領して男が時々リクラニングシートで青空の下ノンビリしていました。今はどうなっているんだろう。最も印象深いのは乳母車に赤ん坊と同じぐらいの大きさのキューピットを三体積んで、手縫いの着物で飾り、70歳代位のお爺さんがベンチに座って編み物をしていました。近在では有名な人らしくて、ある日、郵便局に寄ったら、そのお爺さんがいて、局員がお爺さんに声をかけていました。「お孫さんはお元気?」、お爺さんは嬉しそうに頷いていました。郵便局の前に着飾った和服の可愛いキューピットが三人乳母車に乗っていました。
 ときわ食堂はメニューが豊富ですね。店主は確か僕と同年輩、元気だろうか、奥さんもほんわかとしてくつろげる食堂でした。とここまで書いて、うたかたの日々を覗くとタイトルが“ピグマリオニズム(人形愛)”です。これ又偶然。でも、このキューピッドネタは四谷シモンの『人形愛』をコメントした時、過去ログにアップしているかもしれない。
 この図書館で観た最後の解説付き映画は『黄昏』でした。ヘンリー・フォンダキャサリン・ヘップバーンジェーン・フォンダとの競演で、何故はっきり覚えているかというと映画の面白さもさることながら、解説した映画評論家が都の予算が少なくなって、定期的に映画会を行って解説することが出来なくなりました。そんな寂しい思いが記憶になって残っていたのでしょう。「本駒込図書館」と、「ときわ食堂」で話が飛んでしまいましたね。