最早、ヨイトマケの時代ではない

 投資信託セミナーのレジュメのチャプターが「貿易大国から投資大国へと変わる日本」であった。日本は輸出を中心とした貿易で黒字を積み上げ、世界一の対外純資産を築いたが、2005年では海外への投資から収益を得る所得収支が貿易黒字を越えるまでになったと言う。
 2005年で対外純資産が180兆円ですよ。驚きました。その中味を見ると、一昨年から所得収支が貿易黒字を上まったのです。ちなみに、アメリカの純負債(資産ではないですよ)は260兆円ですね、結局、日本のカネがアメリカに投資されてその利回りで、日本が経営されている。それにしてもアメリカに沢山お金を貸しているのに、為政者達の腰が低いですね、何か金持ちのぼんぼんが、ガキ大将に「○ちゃん、ちょっと、カネ貸してよ」って、巧妙に可愛がれる構造に似ている。用心棒代とも考えられ得るか…、これもある種、いじめ構図かもしれない。
 とにかく、2004年時において10兆円超の貿易黒字でしょう。それが、2005年に逆転して、所得収支が約11兆円超、貿易黒字が8兆円弱でしょう。あんまり実感のない数字ですが、何となくイメージがつかまえられる。
 レジメのグラフを見ると、このようなトレンドになってゆくだろうとの読みは素人の僕でもわかる。もはや、物作り大国は返上で外国の人にお金を貸して利ざやを稼ぐしか生きる道がないとも言える。
 GDPの予想で言えば、日本は2010年に中国に追い抜かれて世界第二位の地位から落ちるということです。2050年では、?中国?アメリカ?インド?日本?ブラジル、ロシアというゴールドマンサックスの予測です。
 こんな風に書くと投資信託のお先棒を担ぐようなので、やめますが、当然、日本におけるワーキングプアの問題に関わってくる。工場は中国、今ではベトナムが注目されている。日本法人であっても海外で生産するわけでしょう。益々、日本ではものをつくらなくなる。その少ない物つくりの現場でも人材派遣会社経由で様々な外国の人達が働くことになる。
 その流れは八十年代後半からありましたがね、東京でいろんな国の人と一緒に働きました。南北問題が東京にやってきたという感じでした。
 そのトレンドが段々と鮮明になったということでしょう。勝ち組、負け組、格差、下流などと言ったキーワードがそれらしい思想系の言葉として流通していって、フリーター、ニート、引きこもりなどを横糸に解読に苦労する織物を織り上げていったのですが、「ワーキング・プア」というかってなかった事態が表れたということが有識者リトマス試験紙になった気が致します。
 そのことについて、とくに「フリーター、ニート」達について語る語り口が頓珍漢な、自分たちの既得権を自明のものとして(何ら疚しさを感じないで、それは正当に獲得したものとして)、定職につかない、つきえない若者達の大量出現を嘆いてみせるオヤジ達の身振りが俗流若者論として目だったバブル崩壊以降の時代思潮だったと思う。
 ヨイトマケの唄がロマンとして語られたわけですよ。懐かしがるだけならいい、そのような労働は今、この国でも有効だと言いたがっている魂胆が見える。そのような労働はワーキングプアにアクセスする。殆どのホームレスは働いていますよ。ワーキングプアにさえ手が届かない。
 だったらどうしたらいいのか、僕には答えがない。ただ言えるのは、この国では、2%の経済成長率を引き受けた選択肢では投資しかないだろうという、最適化であって、そんなのは、いやだ、先端技術をテコに、少子化、教育問題などをみんなで考え合意して経済成長率を3%、4%、5%と伸ばして、貿易立国よ再びというのを声高に言いたい気がしますが、どうも説得力がない。
 やはり、海外に投資する金貸し業が日本の残された生きる道なのかと思ってしまいます。そのような方向性と、ワーキングプア」の問題解決にはどのような回路があるかどうかと、目下のところ思案中です。というより僕にはとても手に余る作業ですね。ヨイトマケのように額に汗して働く場所は、この国を飛び出て探す方がアリエールって思いますね。もう、僕には遅すぎますが…。結局、日本では帳簿上、カネが余っているのです。でも、それが使えない、それが問題なんです。