落下の月が踊る

旅をする裸の眼 (講談社文庫)

旅をする裸の眼 (講談社文庫)

21日に多和田葉子の自作朗読法然院で自作朗読の一夜をすごしたのですが、京阪電車では『旅をする裸の眼』を持参していました。
本書の主人公はホーチミン孔子が好きなベトナムの女子高校生で、学校の代表としてスピカーとして、全国青年大会に東ベルリンまで出かけるのですが、拉致って言うか、西側の大学生にボーフムまで連れられて一緒に同居が始まり、だけど、やはりモスクワに行こうと列車に乗るが反対方角にパリまで行っちゃう。
それから、同郷人、パリの娼婦達を始め様々な人達と同居(居候)を始めるが、少女はフランス語がわからない。
その心許ない日々に、ある日、映画館で「あなた」に出会う。
少女の拠り所は「あなた」で、言葉はわからないけれど、わからないからだからこそ、「あなた」が少女の中に深く入り込む。「あなた」とはカトリーヌ・ドヌーブなのです。
僕はカトリーヌ・ドヌーブに関してはそんなに詳しくない。何となく僕より年上で伝説の女優って感じだったが、ウィキペディアで調べると、マイッタ!僕と学年が同じなんだ。ということは吉永小百合と同じ。この小説は13章の章立てになっており、それぞれのタイトルがドヌーブ出演の映画タイトルになっている。
第一章「1988」がリアルタイムで、「Repulsion1965」と、1988年にベトナム少女が1965年のこの映画を見るわけです。そんな構成になっているわけ。
そして第二章から第十一章まで、見た時と、映画の公開日時がズレて行くが、「第十三章2000」では、公開映画とぴったりと重なる。
12年間の不穏なシネマの日々が「あなた」になりきって語られるのです。
最後の映画は「Dancer in the dark」です。

「でもそのキャッシーさんはどこにいるんですか?」セルマはこの盲目の女性が誰かといっしょにいるところを見たことがなかった。「今どこにいるのか知りませんけれど。でもあたしが映画館に入ると必ずちゃんといつも隣にすわっているんですよ」

そうやって、作家の筆は終わる。キャッシーはカトリーヌ・ドヌーブで、セルマはこの映画の主人公ビョークで、盲目の女性は大人になったベトナムの少女なのでしょう。
それで、この映画は一度見たはずですが、又、見たくなりyoutubeで検索したら、全編公開されていました。字幕はないけれど、だけど、それだからこそ、ベトナム少女の眼で見ることが出来る。でも、英語の聞き取りに不自由ない人はそんな不遜な言葉の受容が出来ないかもしれないw。
1/14http://jp.youtube.com/watch?v=KT4SJfap52Q
2/14http://jp.youtube.com/watch?v=NpCFPS0JDnM
3/14http://jp.youtube.com/watch?v=p5RnxQj34L4
4/14http://jp.youtube.com/watch?v=5FzheMmuYsU
5/14http://jp.youtube.com/watch?v=x3ZN-p-gSt8
6/14http://jp.youtube.com/watch?v=NUq2Bi-lX-A
7/14http://jp.youtube.com/watch?v=OEvgsJTxvN8
8/14http://jp.youtube.com/watch?v=y0dKeiM8DpY
9/14http://jp.youtube.com/watch?v=n2rei2tsuaY
10/14http://jp.youtube.com/watch?v=F8RZKgFcbWo
11/14http://jp.youtube.com/watch?v=OvyxaIhu4Tw
12/14http://jp.youtube.com/watch?v=UkDcNOZOT0c
13/14http://jp.youtube.com/watch?v=s8UZaMkfxxY
14/14http://jp.youtube.com/watch?v=jsecIgxWQJA
この映画を再見して、ビョークは誰かに似ていると思ったら、不思議なものでしゃべり、所作、表情といい、歌い方も誰かさんと重なってしまった。ビョーク自身がよく日本人に似ていると言われたらしいが、満更僕の目も節穴ではないと思う。

ダンサー・イン・ザ・ダーク [DVD]

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オマケ:http://jp.youtube.com/watch?v=l2loVEqBW5Q