東京画


1983年東京で開催されたドイツ映画祭で来日したヴィム・ヴェンダースは16ミリカメラを担いでカメラマンのエド・ラッハマンとふたりで当時の東京の現在を撮影して回った。ビデオの裏カバーに掲載された樋口泰人紹介文を引用します。

彼らの興味を引いたのは、パチンコ店、ゴルフ練習場、東京タワー、蝋細工食品サンプルなどなどである。愛する小津安二郎の東京と、目の前にある東京との差異と同一性に戸惑いながらも、彼らは笠智衆やカメラマンの原田雄春といった小津映画ゆかりの人々にインタビューし、現在の東京に小津映画の東京を重ね合わせてみたりする。
編集は『パリ、テキサス』完成後の85年に行われた。その時あらためて映像を見直したヴェンダースは、「まるで他の人が撮影したかのようだった」という感想をもらす。後につけられたヴェンダースによるナレーションでも、「私にはもうほんのわずかの記憶にも残っていない」と語られている。したがってその編集は、失われた記憶の再構成とも呼べる作業となった。編集=再構成を行っている「今」と映像に写された「過去」、そしてさらにその向こうにある小津安二郎。いくつもの時間と記憶が折り重なり押し広げられて、この映画は複数の時間を獲得することになる。(後略)

そして、複数の時間を一つのものとして見る視線は『ベルリン・天使の詩』の天使たちの視線へと受け継がれていくことになると樋口は書いている。
パリ、テキサス』も『ベルリン・天使の詩』も僕にとって忘れられない映画なのでエル・ライブラリー「バザー」提供としてチェックだけだったのに最後まで見てしまった。
多分、5月1日のメーデーの日に大阪城公園内で「エルライブラリー」がバザー出店する予定ですから、ビデオ版『東京画』にお目にかかると思います。