「原発への警鐘」再び=山田孝男

日本の原発、どこで間違えたのか

日本の原発、どこで間違えたのか

毎日新聞「風知草」・山田孝男のコラム再びです。

先週、浜岡原発を止めてもらいたいと書いたが、止まる気配はない。あらためて警鐘を鳴らさなければならない。そう考えていた折、30年来、原発への警鐘を打ち鳴らし続けてきた経済評論家、内橋克人(かつと)(78)の話を聞く機会を得た。
 神戸新聞の経済記者からフリーに転じて44年。モノづくりの現場を歩いた豊富な取材経験に基づき、経済技術大国・日本の過信と、現代資本主義の人間疎外を鋭く問う評論活動に定評がある。NHKテレビ「クローズアップ現代」で登場回数最多の常連解説者と言ったほうが通りがいいだろうか。
 この人は米スリーマイル島原発事故(79年)後の84年、週刊現代の連載ルポをベースに講談社から「日本エネルギー戦争の現場」を出版した。どのくらい読まれたか記録がないが、旧ソ連チェルノブイリ原発事故(86年)直後に「原発への警鐘」と改題して文庫化。これは5万3000部売れた。
 やがて地球温暖化防止と原発ルネサンスの20年が訪れ、労作は忘れられる。が、3・11を経て先週、一部復刻版「日本の原発、どこで間違えたのか」(朝日新聞出版)が出た。福島第1原発ルポに始まり、このままでは亡国に至ると結ぶ原著には予言書の趣がある。
 内橋はこう言っている。原発安全神話には根拠がない。原発推進の是非が国会やメディアを通じ、文字通り国民的議論に付されたためしがない。あくなき利益追求という経済構造に支配されているのが実態だ。その危うさを問うべき学者も、メディアも、利益構造の中に埋没している。その現実が、地震津波であらわになったというのが内橋の確信である。(後略)続き>>>>◆風知草 - 毎日新聞