堕胎映画

4ヶ月、3週と2日 デラックス版 [DVD]
サイダーハウス・ルール [DVD]
サイダーハウス・ルール〈上〉 (文春文庫)
サイダーハウス・ルール〈下〉 (文春文庫)
サイダーハウス・ルール―シナリオ対訳
id:ginyuさんは、2009年度のマイベスト1に
『4ヶ月、3週と2日』を選んでいたが、タイトルを見た時、映画を思い出さなかった。でも、上映館で僕は観ていたのです。ginyuさんのレビューを読んでまざまざと思い出しました。地味で素っ気ないタイトルですねぇ。でも、それがこの映画の全方位に距離感を保った批評精神の現れかもしれない。事件や事故は劇的であるけれど、淡々と映像化して行く。劇的なカメラワークではない。ドキュメンタリー風と言えばいいのか、それだけ、登場人物たちがリアリティを持って生きているやるせなさが前景化する。
確かに、ginyuさんのレビューを読んでマイベストに選んだのはわからなくないが、今の今まで僕の記憶から完全に脱落していましたねぇ。
堕胎の問題、偽医者などの映画で最近観た印象深かったのは西川美和の『ディア・ドクター』でしたが、エル・ライブラリーのバザー用にビデオを整理したら、僕が大好きな作家ジョン・アーヴィング原作の『サイダーハウスルール』がありましたね。
アーヴィング自身が脚本も書き、俳優として出演もしている。
この映画は孤児院の医者でもある院長と院長自ら主人公の孤児を医師として修行させ(学校に行かせて正規の資格取らせるわけではない)、中絶手術を日常的に手伝わせる。この孤児院の診察室は、そんな問題を抱え込んだ女達の「駆け込み寺」の様相を呈しているわけです。
院長は主人公になんとか彼の意志を引き継いでもらおうとしているわけですが、彼は中絶手術には抵抗がある。
助手として手伝うことは手伝うが彼自身がすべてを仕切ることは拒否する。そんなある日、若い恋人達が中絶手術のために「サイダーハウス」にやって来て、中絶を行う。その交流の中で孤児院以外の世界を全く知らない主人公が恋人達の車に同乗して父親代わりの院長を置いて旅立つ。
それ以降の物語はネタバレになるのでやめますが、面白いと思ったのは『サイダーハウス』のルールは院長の中絶を行うのは原則正しいという信念で明確に内在規範化されていることです。
だから、『4ヶ月、3週と2日』と違ってジ・エンドもハッピーな結末。
ただ、無資格医師の主人公が自ら中絶手術を敢行する決断をする切っ掛けは孤児院を出て農作業を一緒にやっている季節労働者仲間の父娘が近親相姦で娘が妊娠した状況があったわけです。事件だけとりあげると、『4ヶ月、3週と2日』に比べると暗いかもしれない。
僕の記事を検索したら、こんな感想を書いていましたね。一昨年観ていたのですねぇ、だから僕の中では2009年度ではなくて2008年度の映画でした。http://d.hatena.ne.jp/kuriyamakouji/20080401/p1
shohojiさんもこんなコメントしていた。僕とのやりとりをコピペしますよ。

shohoji 2008/05/11 21:21 2008/04/02 02:28
この映画、次女(16歳、高2)は学校の授業で観に行き、私は3女(14歳、中3)と一緒に観ました。
3女は観終わった時、ああ、こんな映画と知っていたなら観に行かなかったのに・・・、と言いつつも、ずっと反芻していたらしく、「産む」という選択もありだね、というのと、主人公の女の子の潔さへの共感と、両方が感想だったと記憶します。
kuriyamakouji 2008/05/11 21:22 2008/04/02 14:31
あの宙ぶらり感は、男にとって耐え難いものがありました。
あの女の子達の決断はよかったのか、
よく、若者たちの間で、「エヴァンゲリオン」について語る時、必ず、問いが出されるのは「決断主義」についてですが、男達はペンディング出来るけれど、女の子は決断しなくてはいけない。時間を停めるわけにはいかない。躊躇出来ない。二択の決断って、しんどい!
思わず、僕は男に生まれて良かったと不遜にも思ってしまった。男には子供を産む苦痛がない、この非対称系はどんなにフェミニズム運動でつついても、解決策がない。SF小説の世界では、体外受精(工場生産)でしか出産ができないとか、そんなのがありますが、そこまで行ったら究極のグローバル化ですね。