山中貞雄

◆もし、若い人に邦画でオススメは何?て訊かれたら、山中貞雄の『人情紙風船』をリストアップするのは間違いない。中国で戦死した彼(1909−1938)の作品は戦争などで焼失して、現在、鑑賞できるのは『丹下詐膳余話・百万両の壺』、『河内山宗俊』の三本のみで、今月末に『人情紙風船』がDVD化される。『人情〜』をはじめて見たのは銀座の「並木座」で、この名画専門の格安映画館は映画好きの若者達がよく通ったものです。ぼくは別段映画青年ではなかったが、それでも、この映画は並木座で二、三回、観ている。銀座であっても、薄汚い小屋(実際はビルの地下)掛け劇場って形容が相応しいが、灯りが点って、ふと、小さい館内を見渡せば、見知りの俳優の顔を発見することもあった。レンタルされれば、もう一度、観たいものです。ぼくは嵐寛寿郎が好きなので、『抱寝の長脇差』(1932年)を観て見たいのですが無理でしょう。山中貞雄シナリオ集で我慢するしかないか…。