下町のジェントルマン(ご隠居さん)

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◆過日、小林秀雄講演「現代思想について」を聴いていたら、冒頭、小林秀雄は《隠居について英語では何と表現するのだろうと、英語に詳しい友人に尋ねたら「ジェントルマンでしょう」と答えたが、日本で言う「ご隠居さん」とは随分、違う。「陸沈」という言葉があるが、ぼくはまあ、市井に陸沈するご隠居さんだと、》言ってみたりするので、え!と思ったら、この講演は小林秀雄59歳の時なのです。赤いちゃんちゃんこの話もするし、落語の枕ですね、芸になっている。そう言えば、仲俣暁生さんのブログは“陸這記”で、“陸沈”の想いがあるのであろうか、ブログを覗くと、小林秀雄について色々と言及している。小林を戦前、戦後と分けて考えており、茂木健一郎小林秀雄観を紹介しながら、興味ある論を展開していました。
◆ぼくは茂木さんの“クオリア日記”を愛読していますが、ひっきりなしに、小林秀雄が登場します。このCDでも、「心と身体」について語り、まるで、これは茂木健一郎の「クオリア」だなあと、思うが40年前の講演なので、茂木さんはまだ、生まれていない。いやギリギリかな?ベルグソンフロイト山鹿素行伊藤仁斎本居宣長など、「直感と分析」、「インテリと責任」、「科学と哲学」、等、質疑応答も交えて145分を存分に楽しむことが出来ました。ちっとも、古くない。内容はムツカシイはずなのに、文字で追うと、読解の困難さが蹈鞴踏むのに、耳で聞く小林秀雄は、まさに“三遊亭円生”であった。円生は“下町のジェントルマン”に相応しい。語りの名人芸である。手近に、“百川・居残り佐平次”のCDがあったので、聞きながら、このブログを書いています。これ、ダイソーの百円コーナーで買ったものです。まてよ、埴谷雄高の語りも円生ですね。円生の佇まいは、“ご隠居さん”の理想的なクリシェかもしれない。いいではないですか、“型”としての円生、そんな年寄りになりたいと、思いますが、“型”なんて、一朝一夕に身につかない。無理ですね、だからと言って、ボケを徹底して古今亭志ん生になるのは、もっと、困難です。まあ、茂木さんは、小林秀雄は円生ではなく志ん生に似ていると言っています。