ジャン=リュック・ゴダール

あれはかって一度も見られたことのなにかでした。歴史〔あるいは「物語」〕をもっていない世界、それでいて、語ることに時間を費やしている世界でした。そしてとりわけ、あれは読むことをこえたところにありました。事実、ランボーマラルメ以降、書くというのは恐ろしいことでした。白いページは敵だったのです。ジョイスとドゥイノの悲歌とのあとで、なぜまだ書かなければならないのかというわけです。それに対し、白い布〔あるいは「キャンバス」〕と向かいあっていて明かりが消されはじめるときにわれわれにおこったことは、ニコラ・ド・スタールを自殺に追いやったこととはまさに正反対のことでした。暗闇のなかに第二の光が出現したのです。スクリーンはもはや障壁ではなく、友人になったのです。ヴェロニカの布やサマリア人の布になったのです。-ジャン=リュック・ゴダールが1995年9月17日にフランクフルト・アム・マインアドルノ賞を受賞した際になされた講演より-

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