フランソワーズ・サガン/田辺聖子「悲しみよさようなら」

前日、森村桂の訃報に触れたのに、サガンが24日に死去したことを知りました。僕が現役の書店員の頃、朝吹登水子翻訳の新潮文庫は全点平積み陳列で、息長く続いたロングセラーでした。そりゃあ、ボーボワールマルグリット・デュラスに比べると、文学史上、評価され得ないものかもしれないが(その辺り、森村桂も事情は似ていますね)、フランス文学専攻でない女学生達や、映画化された『悲しみよこんにちわ』のジーン・セバークのセシル・カットに魅惑されて、手に取った男性たちに支持されたことは間違いない。僕は何十年となく、サガンのことは忘れていましたが(何せ、サガン森村桂も知らぬ間に店頭から消えていましたから…)、ひょんなことで再会を果たしました。田辺聖子の『ジョゼと虎と魚たち』が映画化され、ジョゼを演じた池脇千鶴が、ゴミ収集場から拾ってきた小説がサガンなのです。恋人の妻夫木聡が欠本のサガン(発行点数は多いのです)を本屋で見つけようとするが、棚にない。探すのに苦労する。そんなシーンがありました。僕も念のため、サガンをネット書店で検索したら、殆ど品切れ、絶版ですね。田辺聖子さんは、サガンより七歳年上ですが、“大阪弁をひっさげてサガンのような小説を書くんだ”と、小説修業をしたらしい。9/28の毎日新聞夕刊に“わが愛しのサガン”という追悼文を寄せている。聖子さんはサガンも同じ<夢見小説>で、夢を見つづけ、綴り続けたが、しかし、本拠のサガン女史は、破調を来たし、逝去したのです。享年69歳。