「JOBカフェ」で珈琲はいかが、

◆雪らしいですね、でもこちらは晴天。テレビの国会中継を老母とみていると参院委員会で「少子化、フリーター、ニート…」についてやりとりしている。小泉首相はわざわざ、ニートは何の英語の頭文字を使ったか説明している。こういうときは嬉しそうに喋りますね。『ニート』とは玄田有史 曲沼美恵『ニート』(幻冬舎)の本によると

ニートは働こうとしていないし、学校にも通っていない。仕事につくための専門的な訓練も受けていない。英語の“Not in Education, Employment,or Training”の頭文字(NEET)から、ニートはきている。/その姿は、ひきこもりに似ているが、ニートのすべてがひきこもりのわけではない。ニートには親や家族に生活を依存しているパラサイド・シングルも多いが、だからといって気楽に親のスネをかじっているわけでもない。ある社会学者は、ニートを「本当にとらえどころがないという感じ」と言った。(中略)あいまいなニートという存在について、取材やデータのなかでわかってきたことが、三つある。/ニートの背後にあるのは、本人の甘えではないということ。/どんな人にも、ニートとなる可能性があるのだということ。/ニートの増加をくい止める方法は、あるということ。

◆フリーターや失業者には働こうとする欲がある。そして、その働く場所が少ないとしたら、働きたいという人に優先的に職を用意するのは当然で、パラサイトであろうと、経済的基盤で支えられていれば、働く慾のない人に消費だけに専念してもらえば、社会全体の金の循環もよくなるし、合理的である。財産を食い潰し、食うに困れば生きる慾がある限り、何か手立てを講じるであろう。その時、手を差し伸べれば良い。素人考えではそうなる。でも行政は“少子化問題”にしろ、そう考えない。ニート少子化も豊かさが生んだ鬼っ子であるという共通の理解があるのなら、豊かさを手放せればいいのにそうはならない。
◆むしろ、本音はフリーターやニート少子化が進行すれば、われわれの老後が危ういという打算でしょう。ある議員が質問に立って、最近の子供たちはテレビやビデオばかり見て本を読まない、ゆとり教育の問題について決まり文句を言っていたが、本を読まないのはわれわれ大人でしょう。マンガだってその質の高さは大人たちの読む数少ない蔵書の哲学のない自己啓発書を遥かに凌駕する。この議員に永井均の『マンガは哲学する』講談社+α文庫)を薦めたいものです。実務以前に大人たちに哲学がない。道徳教育って哲学教育でしょう。“考える人”の習慣を持っていない政治家が多すぎる。そんな本を読まない大人に限って子供に本を読めという。そんな打算を子供は見抜いています。ちゅうこさんから、コメントで今月号の『考える人』を買ったと言う。ぼくも買わなくっちゃあ…。
◆ところで、本書『ニート』はエル・ライブラリー(労働情報プラザ)で借りたのですが、2階にそんなニートを対象にした「JOBカフェOSAKA」というお洒落なスペースがありました。利用できるのが35歳までで、スタッフもボランティアを含めて5、6人、常勤しているみたい。気楽に訪問出来るみたいなので、何とか、このニートの状況を脱したいとおもう若者は上手に利用すればいいですね。とにかく、当事者が行政の窓口に揺さぶりをかける。これが第一歩でしょう。でもそれが中々出来ない、お尻に火がつかないというのが問題なんですがね…。
◆本書のbk1のレビューを覗いたら、アップ件数の多さに驚きましたが、そのシビアな視点に本書の読後以上に又、反面教師としても考えさせられました。でもこんな風に赤裸々な眼でニートを突き放している人がいることも事実でしょう。