キューブリック

◆メインテーマ「感じる男」に何でスタンレー・キューブリックの映画『バリーリンドン』が登場するのか、っていう向きもあるかもしれませんが、僕の文脈ではすんなりと、おさまるのです。時代も国も違っても一人の青年がアイルランドの辺境から徒手空拳で野心を持って世界に乗り出すには軍人になることが最良の道であった。僕が生まれ育った街はかっては軍港、今は海上自衛隊の街であったので、1950年代、中学校を出て自衛官に就職する同窓生は結構多かった。そして、そこで、給料を貰いながら、勉強と訓練、技能を憶えて、民間が高度成長時代に突入して景気がよくなると、元自衛官として民間に就職する。僕の働いていた職場の上司に元航空自衛官がいた。彼は文字通り戦争で身内をなくし天涯孤独であったが、義務教育を終えて自衛官になることによって、様々な教育を受ける機会をふんだんに与えられたのです。
◆18世紀のヨーロッパであれ、かっての日本であれ、世界の紛争地帯で戦争が若者にとって、己の野心を充填する装置の役割を果たしている側面も否定出来ない。マイケル・ムーアが『華氏9・11』で、働き口のない、夢もない絶望だけのやるせない想いを抱いている若者達に声をかけて兵士を徴募するシーンがあったが、中高年齢層が居座って、民間企業で正社員としての受け口が狭くなれば、若者達が、国民皆兵制をより引き寄せるような動きをしていくようになるかもしれない。思想・哲学の問題ではないのです。働くところがなければ、何にもしないで、生活保護費を受給しながらおとなしくしてください。戦争・暴力は悪いことです、絶対やってはいけません、では、すまないのです。社会全体のシステムを換える、それは資本制OSを取り外して別のOSを開発するしかない。それがいやなら、問題を先送りして、巧妙に排除の論理で安心安全の砦を築いていくしかない。そんな見立てのコメントをmeditationsさんの『バリーリンドン』エントリーにカキコしました。
参照:『風の旅人』編集だより :本当の危機?③修正