入場料を取る本屋さん

 田口久美子さんの『書店日記』の29回目アカデミックな本の売り方はを読んでいると、ジュンク堂ではOD版*1*2をお客様から受注してデータ保存している出版社にプリントアウトしてもらう経路が原則ですが、見計らいって言うか、ジュンクでこの本は棚に並べたいというのをいわば仮想の客注でOD版を棚に並べているのですね。ブッキングによる復刻版のリストは棚に常陳しているみたいだし、一点一冊に目配りする棚管理はジュンク独特なものなんでしょう。かって、彼女が店長だったリブロ池袋店とは棚管理が随分違うみたい。まあ、それは『書店風雲録』(本の雑誌社)を参照してもらえばいいのですが、ウラ☆ゲツさんが本屋の将来を考えた夢を見た、目覚めてみれば定かに思い浮かべることが出来ないが、≪要は都心型の棚作りのスタンダードを覆す画期的なディスプレイ戦略、というのを夢の中で考えていたようです。≫
 人文、社会科学関係は特に“テーマ”陳列がネットとか、図書館分類と違うジャンルを越えた新しい発見を生み出すような棚陳列を要請します。それを補完する意味で超大型店ではトークセッション・サイン会というイベントで著者たちを呼んで刺激を与えますが、一極集中っていうか、都心ですね。関西では中々そんなイベントを行う本屋さんがないです。保坂和志さんは『小説の自由』を発刊して記念トークイベントとして青山ABCで小島信夫との対談・サイン会を行いましたが、関西の本屋さんでもやって欲しいです。保坂さん自身掲示板で、50人以上集まるなら、新幹線の片道切符代だけで、講演・サイン会をやってもいいなぁ…、とカキコしていました。
 しかし、かようなイベントはあくまで一過性のもので、日常の棚作りが一番大切なのは言うまでもない。だけど、それに対応する書店員が配置されるかというと、一部の書店を覗いてお寒いばかりです。この書店員日記の過去ログにも書いてありましたが、正社員一人の持ち坪数が100坪ですって。実際、店主、店長のみが正社員で後は全員パート、アルバイトが珍しくない。当然、彼らは時間で働いているから、正社員のようにサービス残業さえさせてもらえない。時間になれば、アルバイトからお客さん。結構、本屋で働いているアルバイトは他業種と比べて時給がものすごく安いが“本が好きで堪らぬ”という若者たちが多い。ただ、彼らは自分の興味の分野だけに蛸壺的に詳しいのであって、別のジャンルになると、まるっきり商品知識がない。それは仕方がないのです。本屋ではアルバイトに商品知識の教育はしない。だから、コミックに詳しいアルバイト店員はそもそも、そのような知識を持っていたのであって、このアルバイトが人文棚に配属されると、お客さんより商品知識がないと苦情を言われる。おまけに棚陳列、仕入れもある程度やるから、オカシナ棚陳列になる。そんなロスを回避するために例えばブックオフのようにすべてを簡略にしたマニュアルを作成して、今日、働き始めたアルバイトでも作業が出来るようにする。そうすると、ウラゲツさんのような陳列はそれこそ、夢の中っていう状況が生まれます。ただ、ブックオフのような戦略は掘り出し物を見つけるセドリが可能となる。数回、僕も本を持っていったが彼らの鑑定には驚きました。僕の鑑定とまるっきり正反対。ゴミ本を買ってくれて、持って行くのを迷った本がゴミ本鑑定です。まあ、だから時々、ブックオフを覗いて、買ってしまうのですが古本業者も覗いていますね。本の価値って視点が変わると全然評価が違う。値段が違う。標準化の視点なら致し方ないことです。
 新刊書店でも、今は偶々採用したアルバイトの質によって棚が変わる。そんな状態が通常の本屋さんの顔でしょう。店長は店管理で汲々です。万引き件数の多さは尋常ではない。何十年と大昔から考えていたことですが、年会費、もしくは入場料をとる本屋さんがあってもいいのではないか、有料図書館はありますが、店内でじっくり座り読みも出来る。買わなくとも入場料を支払う。池袋の某古本屋のように入店者の鞄などはお預かりする。ロッカーを設置してもいい。入場料にひっかかるなら、本を購入した人には入場料を返金する。本代と調整すればいい。万引き防止にもなるし、より質の高い読書人が三々五々と集まって来ると思う。入場料は前払いですが、一冊でも買えば返金になるのだから、来館客数とお買い上げ客数とが、殆ど変わらない数字になるのではないか。まあ、これがウラ☆ゲツさんに対する僕の白日夢レスです。
参照:http://www.webpoplar.com/beech/20050315/contents/shoten.html『出版界の「美味しい市場」』♪やっぱり本屋が好き - 哲劇メモ