手紙を書きたくなりました。

 耳に障害のある少年フランキーは今日も父親宛に手紙を書く。切手はいつも素敵な魚の模様?(船かもしれない)。母と少年と祖母はスコットランド中を転々としている。少年の障害は父親の暴力だったらしい。息子にはそんな記憶は勿論ない。一家はそんな父親から逃れているのですが、少年には真相を伝えていない。今度も又、港街に引越しをする。少年の部屋の壁に大きな世界地図が貼られている。世界中の都市の上に赤いピンが沢山つきささっている。それは、母親が作り出した物語で、父親が船乗りで、寄港した都市の名前なのです。
 少年はせっせと、父親に手紙を書く。宛先は私書箱。母親が息子の手紙を受け取り、息子の声を聴く。そう、息子は声を発しない。お手伝いに買い物を頼まれても、筆談か身振りで済ます。でもとても明るい少年だ。転校先でもすぐに友だちが出来る。少年は地理が得意。魚フェチで大好きな本は魚類図鑑。そんな魚のこと、学校のこと、ベジタリアンでチップスばかりの食卓のこと、引越しをすぐにしたがる母親のこと、その度に死にたいと愚痴る祖母のこと、何でもかんでも、少年は手紙に書く。
 父親宛に投函する手紙が母親に届き、母親が素敵な船の切手?(魚かもしれない、少年が貼る切手が船なら魚のはず。こんど、もう一回観る機会があったら確認します。)を貼り、母親が父親になったつもりの筆跡で返事を書く。母親が創作した「パパが乗船する船の名前はACCRA号」。息子は父親の顔を知らない。たった一枚の母親と並んで写っている写真の花婿は花嫁衣裳の母の顔だけで、破られている。ところが、港街に母の創作物に過ぎなかったACCRA号が現れる。母は決心する。父子物語を貫徹するために、“一日だけのパパ”探しを…。
 そして、「オペラ座の怪人」のジェラルド・バトラーが登場するのです。後は省略します。
 映画でじっくりと、父子物語を堪能して下さい。梅田のOS劇場で公開中です。平日の昼間なのに、八割方席が埋まっていました。僕の隣は同年輩位のオヤジだったのですが、泣いていました。息子がいない人は息子が欲しくなる映画ですね。でも、母と子の了解済みの交換日記でもありますね。日記を読む少年の声が聴こえる。Dear○○さんへ、手紙を書きたくなりますね。
『Dearフランキー』は女性監督らしい、しっとりと、幸福感漂う映画でした。