とうとう夢見た本屋が実現か?

 現役の書店員の頃、時々、夢と言うと気恥ずかしいので妄想と言っちゃうと、何ですけれど、本を付加価値をつけて売ることは出来ないかと言うことです。僕がこのブログで拘って「再販維持制度」について言及していますが、別に安売り合戦を推奨しているわけではないのです。むしろ逆に高く売ってもいいではないか、通常とは違う発想の視点があったのですが、中々理解し難いので、ネタとして実際にあった万引き犯の対策に犯人に定価の倍以上で売ってしまう書店主のやり方を例証したのですが、これは厳密に言えば、「再販維持制度」がネックになってしまう。現在の新刊流通システムの中では例えば著者のサイン本は原則返品出来ない。そういう意味で商品としての価値が劣化するのです。何か少しおかしいですね。勿論、現実にはサイン本を返品する書店主はいないでしょう。返品流通の市場ではマイナスの付加価値ですが、実際はプラスの付加価値です。だったら、定価の上乗せをしても別段支障がないはずだ。読者の納得が得られるはずです。でも、それも「再販維持制度」がネックになる。そういう発想の方向性の中で僕なりに入場料を取る本屋さんを妄想していたのですが、有料私設図書館は兎も角、有料本屋の具体的な方途まで構想しなかったのに、なんと横浜の馬車道で来年の秋まで、有料ブックストアがオープンしていると言う。馬車道は僕にとっても凄く懐かしいところです。僕の居た本屋は関内にありましたから、すぐ近くです。かような実験店舗に相応しい立地です。一年間の限定ですが、この仕掛けは面白い。
 参照:♪http://www.super-jp.com/bookpick/encounter/index.htmlhttp://www.super-jp.com/bookpick/ 
 僕はよく本の書き込みをやるのですが、そんな本を古本屋に持って行くと嫌がられますよね、そんな書き込み、線引きを逆に面白いと発想の転換をする。本を封印パックして本文より一言引用してみる(過剰な情報を封殺して上書きに一言だけpopする)。でも、お客さんが開封しても購入するかどうかは自由。そして自分なりのメッセージカードをパック袋に入れてよい。そのようなメッセージカードで次のお客さんは買うかどうか決断する。
 内沼晋太郎さんと言う方は色々と本についてチャレンジしているのですね。まだ、お若いので思い切ってやって欲しいです。♪内沼晋太郎「ぼくたちが本と出会うときのこと」
 僕が一番構想していたのは、本屋さんが製本をする。本屋さんのブックカバーより一歩前進して付加価値をつけて製本する。そんなのがあってもいいのではないか、妄想ですかね…。でも、オンデマインド印刷では実現可能ではないでしょうか、品切れ、絶版本などのデーターメニューを店頭で用意して出版社が製本しないで本屋さんが独自の製本をするということです。
このことに少し関連しますが、保坂和志さんが小島信夫の『寓話』をプロジェクトチームを作って発刊する『寓話団』(仮称)がスタートしてますが、保板で保坂さん自身がこんな広報をしています。

【新「寓話」の表紙デザイン公募】
いま進行中の、新「寓話」の表紙のデザインを公募します。
締め切りは、、、、よくわかんないんですが、いちおう12月半ばということで。
本のサイズはA5判。使える色は1色。表紙に必要な情報は、「寓話」と「小島信夫」だけ。本の厚さは、暫定ですが、20ミリ。
応募の仕方は、応募してくれる人が出てから考えます。(誰か名案ありますか?)

 詳細は保板で見てください。内沼さんも保坂さんが大好きみたいですが、こういう遊び心で楽しく本作りするのはいいですね。こういうことを本屋の店頭内工房として出来ないかなと思っていたのです。製本って結構職人芸ですよね、だから、著者と本屋と製本屋とのチームで版元に眠っているデータを付加価値をつけて読者に提供する。ということです。