ヤクザはヤクザの道を行け

股旅 [DVD]ノー・ディレクション・ホーム:ザ・サウンドトラック木枯し紋次郎 DVD-BOX III 新・木枯らし紋次郎 編
 市川崑監督『股旅』(1973年)を見ました。見た記憶が定かでなかったのですが、あ!これは『スケアクロウ』と思いましたが、同じ1973年なので、時代がそういう時代だったんでしょうね。
 「愛を求めて彷徨う旅か 孤独を求めてさすらう旅か 縞の合羽に三度笠 口の楊枝がヒュウと鳴る あいつが噂の紋次郎。」
 中村敦夫主演の『木枯らし紋次郎』(1972年)は全国区的大ヒットだったし、僕も毎週放映を楽しみにしていました。『木枯らし紋次郎』で資金面でも、地ならして満を持してATG系(何か懐かしい)で市川崑が好きなように撮ったそんな映画ですね。随所にこだわりすぎた映像なので緊張を強いられ見終わってど〜んと疲れました。股旅と言えば今の人にとって氷川きよしの「音次郎」、「半次郎」ですが、歌う映画スター第一号と言われる高田浩吉を忘れてはいけませんね、「伊豆の佐太郎」ですか、氷川も高田も股旅と歌謡はよく似合い、浮き浮きした歌いっぷりですが、市川昆の股旅は紋次郎と言い、限りなく暗い。ニューシネマ『スケアクロウ』の色調とシンクロしている。僕は「ニート」についてオポチュニックに「フーテン」について語りましたが、『股旅』が三人のフーテン烏の友情物語ですが、『スケアクロウ』は二人のフーテン野郎の友情物語と言って良い。男の友情は悲劇に向かうことが宿命付けられているのか、悲しいね。
 しかし、この時代、ロードムービーが沢山、上映されていたのですね。斎藤耕一監督『旅の重さ』(1972年)、新藤兼人監督『竹山ひとり旅』(1977年)、増村保造監督『大地の子守唄』(1976年)、『ハリーとトント』(1975年)などになるみたいですが、やはり1970年代、旅、フーテンとなると、吉田拓郎をはじめ、かまやつひろし泉谷しげる岡林信康高田渡などのフォーク歌手たちですね、彼らは団塊の世代にあたるから、彼らと同時代のオヤジ、オバサンたちは2007年度を迎えて大挙して現役引退、時間と余裕が出来て『放浪』、『旅』に世界を股に駆けて敢行するでしょうね。その旅が重いか軽いか、巡礼の旅になるかヤクザの旅になるかわからないが、少なくともそれによって一つの時代が落とし前をつけて終焉するかもしれない。
 ところで、久し振りに生命学の森岡正博が日記を更新(1/21)しましたね、その結語が森岡さんも木枯らし紋次郎になったのかとギックとした台詞です。

[…]そういうのはすべてわかったうえで、あたかもそういうことはまるで分からないような顔をして、自分の思うことを自分でどんどん組み立てて、どんどん無防備に提案しまくっていきましょう。それが哲学思想の生きる道、どうせ一回限りの人生じゃないか、なにをためらうことがある。やくざはやくざの道を行け。

 どうぞ、やくざな道を行って下さい。そんなことを思っていたらichikinさんが、ボブ・ディランドキュメント映画『ノー・ディレクションホーム』を観たのですね、その感想をアップしている。ディランは僕より年上だけどまだ現役?この人はハーモニカを口に銜えた木枯らし紋次郎かな、『風に吹かれて』、おひかえなすって、生国はメリケンの……、
http://d.hatena.ne.jp/ichikin/20060122