どうも、どうも、三文役者の殿山です。

 オンライン書店ビーケーワン:三文役者の無責任放言録前日に続き図書館で借りたDVD『三文役者』を観たのですが、セカンドワイフ荻野目慶子が良かった。正妻の吉田日出子は僕の大好きな女優であるけれど、荻野目慶子に負けてしまったね。まあ、そういう役どころなので致し方がないが、殿山泰司を演じた竹中直人は喋り口調は殿山なのですが、何か全体として違うんだよね、始終モノマネ演技を聞かされ見さされた感じで凄く面白かったのですが、不満を覚えました。モデル映画では最近ならヒトラーを演じたブルーノ・ガンツ『ヒトラー最後の12日』ですね。本当にブルーノ・ガンツヒトラーヒトラー以上にヒトラーという圧倒的な説得力がありました。残念なことに竹中直人殿山泰司は泰ちゃん以上に泰ちゃんだったと言う説得力に欠けました。まあ、竹中直人の演技は作りすぎという印象は元からあるのですが、この映画でもそれが出ている。そのような演技の仕方が彼の真骨頂なのでしょうが、そのような作りすぎであってもナチュラルな感じがすればいいのですが、竹中直人の演技はこの映画に限らず、もう一人の竹中直人の顔がちらつくのです。だから、殿山を演じていてもなり切っていないもう一つの顔が気になるのです。裏声が聞こえるっていうか、冷めた批評精神を竹中直人の演技にはいつも感じますね。荻野目慶子は役に没入した潔さを感じます。竹中直人は違うのです。自意識の針山がこちらにチクチクささるような気がします。だからなんか落ち着かないのです。殿山泰司はそんな自意識を吹き飛ばす居直りがあったと思うんです。荻野目慶子にも天性それがあったと思う。演技で多分表現するには無理だろう。もし出来るとしたら色川武大かな、先に色川さんのほうが逝ってしまっていたから、殿山泰司色川武大を演じたらブルーノ・ガンツヒトラーに負けないものが出来上がっていたかも知れない。そんなの本末転倒だ、やはり、生前、殿山泰司に演じさせてドキュメント三文役者を撮るのがよかったのか、とにかく竹中直人の熱演にご苦労様というしかない映画でした。
三文役者の死―正伝殿山泰司 (岩波現代文庫)三文役者 特別編 [DVD]阿佐田哲也・色川武大 人生修羅場ノオト三文役者の待ち時間 (ちくま文庫)