身体に聴く

スーパーサイズ・ミー 通常版 [DVD]30日間マクドナルド生活―自分の体で実験してみました森達也の夜の映画学校
 武田徹オンライン日記で教えてもらってばかりなんですが、5月28日の記事『太らなかった』は面白く啓発されました。この映画『スーパーサイズミー』は予告編で見たのですが、予告編だけで、ゲップが出て、シルバー料金千円を払ってまで、見る気がしなかった映画ですが、結構、ヒットしたみたいですね、どうやら、先に結論ありきみたいな反マクドナルドキャンペーン映画と解釈されてもおかしくない映画だったんでしょう。
 まあ、マイケル・ムーアの『華氏911』について、あれはドキュメンタリー映画ではない(是枝裕和)、嫌いだと言う(森達也)との対談が収められている『森達也の夜の映画学校』(現代書館)文脈で言えば、

是枝 僕はね、面白いんだけどドキュメンタリーじゃないっていう立場なんですね。それはなぜかというと、僕の中にある漠然としたドキュメンタリーに対する考え方っていうのは、撮ることによって考えていくっていうか、撮ることによって発見をしていくっていうね、取材をしていくっていう外的な行為と自分を発見していくっていう内的な作業っていうのが、撮影していくに従って一緒に進んでいくっていう、撮っている自分と撮られている側とでね、同時進行で進んでいくっていう、そういう共同作業から生まれる作品っていうのをドキュメンタリーって考えていて。そういうものとしてドキュメンタリーをすごくすばらしいものだと思っているところがあるんですよ。もしジャンルがあるとすると、そこがドキュメンタリーっていうジャンルのいちばん豊かなところかなっていうふうに思っているんですけど。
 マイケル・ムーアの作品に関していうと、言いたいことが先にある。特に今度の『華氏911』とかは、結論は明快なんですよ。ブッシュ再選拒否っていう結論に向かって進んでいく話なので、そこへ向かっていくプロセスでどういう映像を積み重ねて、どういうナレーションを加えていくかっていうことが、その結論が際立つための逆算として行われている。(後略)ー22頁ー

 『スーパーサイズミー』もそんなマイケル・ムーアの系譜に位置する映画なのでしょうか、そんな映画に違和感を感じて マツモトケイジ が身体を張って検証し、そのレポをネット公開、そして一冊の本として『30 日 間 マ ク ド ナ ル ド 生 活』が上梓されたのでしょう。とても健全な検証方法ですね。単に大きいもの(強いもの)は悪いんだ、小さいもの(弱いもの)が正しいんだと、結論へ向かっての物語つくりは政治の手管でしょう。報道は、ジャーナリズムは常に検証の検証という適切さへの執拗な作業が要請される。そのことでしか、信頼性は担保されない。
 しかし、よくまあ、30日間もマックを食べ続けましたね。