アルセーヌ・ルパンになりたかった女の子

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 ミクシィでマイミクさんが、あなたはホームズ型、ルパン型、どっちとカキコしているので、僕は間違いなくルパン派であったことの証に○十年前に書いた生原稿があったので、恥ずかし気もなく一部引用アップします。

「Kちゃん、一緒にあそぼう」
Kは益々紅くなり、小さく呟いた。「うん、僕…」とそれでも本から目を離さなかった。
A子はくるりと敷居をテコにどんでん返しをし教室に入った。(中略)
「Kちゃん、いつも何を読んでいるの、そんなに面白いの、…」
Kは恥ずかしそうに本の表紙を見せた。それはアルセーヌ・ルパン全集の一冊であった。
KはA子にそれを差し出した。そして面を上げもせず蚊のなくように言った。
「もしよかったら、A子ちゃんに貸してあげる」
A子はそれを手に取りパラパラめくった。Kは嬉しそうに自信に満ちた表情で顔を上げた。
そこにはかってA子が見たことのないKの表情があった。力強さがあった。
「ぼく、もうこの本は読んでしまったんだ、面白かったから、又、読み返しているんだ」
A子は驚いたようにKを見た。
「わたし、マンガしか読まないもの、でもそんなに面白いの、読んでみようかしら」
「うん、きっと、A子ちゃんなら気に入ると思うな」
「だって、…」Kは口ごもり紅くなってうつむいた。
「なあに」A子はスキップしながらKに寄り添った。
Kの目の前に少女の形の良い汗ばんだ掌があった。
「ルパンの小さい頃は、きっとA子ちゃんみたいだったと思うんだ」
A子は本の表紙を見やった。
「へえ、いやだ、ルパンって男なんでしょう」
Kはしまったという表情を浮かべてバツの悪そうに身体を縮めた。
A子はそんなKの頭をこづき、「本を借りて行くわ」と本を持ったまま笑いながら、走り抜け、
今度は教室の後ろから廊下に出た。A子の足早の音が遠のいた。
みんなに隠れて誰にも気づかれずにすむところを見つけるのはA子にとってたやすいものだった。
A子は校庭の隅の日だまりの隠れ場所で本をめくった。面白く、時の経つのも忘れた。
授業の始まるベルがし、A子はあわてて教室に駈け戻った。
あまり早く走ったので廊下のところで今にも教室に入ろうとする担任のZ教師とぶっつかりそうになった。
「こら、A子、あれほど、廊下を走るなと言っているのにしょうのないやつだなぁ」
彼はダミ声をあげた。しかしその目は笑っていた。教室の級友たちにもその声は届き、
教師と一緒に教室に入ったA子は珍しく顔をあからめ自分の席に戻った。
ルパンをカバンに入れ教科書を取り出した。一番前の窓際の席にKが行儀良く手を揃えて座っていた。
一番後ろの廊下側のA子の席からKの横顔が一挙一動がくまなく見えた。
授業の合間に時々Kを盗み見て、A子はルパンみたいだと言ったことを何度も思いだし、
本当に変な子!でも、可愛いなあと思い、ひとり笑いした。
でも、ルパンみたいだと言われたことは悪い気はしなかった。
小さい頃、パパに大きくなったら、世界を駆けめぐるスパイになるんだって言ったことを思い出した。
パパは高らかに笑い、私を膝に抱き上げ頭をなぜて言った。
「おう、いいぞ、それでこそ、パパの子だ」
今度、パパに言ってみよう。私アルセーヌ・ルパンになるんだって、パパは驚くだろうなぁ、きっと。
何て言うかなぁ、でもママは悲しむに決まっている。
「あんたは女の子なんでしょう」と、「女の子らしくしなさい」って、
A子はKを見やって又くすくす笑った。Kをママに紹介したらママ、きっとKのこと気に入るだろうなぁ、
いつも家につれてくる友達はママを困らせてばかりいるんだもの、(中略)

 でも、今はホームズに惹かれる部分がありますね、トシ食ったのか、