古い写真を整理しながら

オンライン書店ビーケーワン:記憶
 古畳が底が抜けそうな状態だったので、畳を上げて、床下に乾燥剤を撒き、シロアリ防虫剤を塗ってもらったらりして手当をしました。知り合いの業者さんに来てもらったので、仕事も丁寧で、値段の安すぎるんじゃあないかと心配するほど良心的で、屋根とか他の不都合も、ちょいと直してもらいました。
 その間、僕も結構、忙しく、仕事の前後の段取りとか、整理整頓で、とうとう大掃除より大変なことになってしまった。ついでに、アルバム帳ってデカ過ぎるでしょう。置き場所に困ってしまう事態になった。畳を上げたのは一階のお袋の部屋なわけです。シロアリ防虫剤の臭いがまだ立ちこめるのか、少し、気分が悪くなったと言っていましたので、暫く辛抱するしかないでしょう。お袋も根を詰めて作業をしていたので、臭いとミックスで目眩をおこしたりしました。今は、やっと回復しましたけれどね。
 僕は思いきってアルバムの写真を剥いで、100円コーナーで買っていた葉書ファイル(40ピース)が残っていたので、それにファイリングしました。何百枚の記念写真を、そうやって整理してお袋のもとに持って行くと、えらく評判がいい、どうやら、アルバムに綴じていた時は、握力が減退しているお袋にとって、アルバム帳は重すぎるのです。それで、長い間、アルバムの写真を見ていなかった。葉書サイズでまとめると、寝ながら見ることが出来る。睡眠薬代わりになります。
 いつか、隔月雑誌『風の旅人』さんとやりとりしたことがありましたが、そううそう、雑誌コードで登録していなくて書籍コードですね、中味も外装もずっしりと重たい本ですが、アルバム帳に匹敵する大判ですよ、とても通勤電車中とか、ベットの上で横になった読むとか、見るとか握力がないと持続できない、そういう視点から僕はもう少し、版型を小さく出来ないか、紙質も文字のところは、普通の紙で軽くして欲しいみたいな要望をだしたのです。
 編集長のスタンスは、写真を生かすには、それ相応の舞台装置がいるとのことで、これ以上、版型を小さくすることがないと、一歩も揺るぎませんでした。
 風の旅人さんが言うのには、一気読みして、一丁上がりみたいに消費してもらいたくない、部屋の中に多分インテリアの一部みたいに飾って(並べて、差して)、何らかの拍子に手にとって、めくってもらう。そんな行きつ戻りつの読み方を想定した編集をしているので、器としての版型、紙質が、『風の旅人』の重要な要素で、軽装版にするような発想は端からないとおっしゃったわけです。
 その徹底さは、編集長の腰の据わった見識で僕は感心したのですが、今、棚を見ると、創刊号から26号まで並んでいる。勿論、隅から隅まで読んではいなくて、風の旅人さんの言うように豪華なアルバムをハレの日とかそんな特別な日でないと、見ませんが、まあ、それよりは頻度は多少高いけれど、つまみ食いのように見たり、読んだりしているのです。
 一ページ目から終わりまで通読しませんですね。そういう状況の中から次号が発売されて、段々を号数が増え、未読の頁も増えている。そんな具合です。
 写真って、見る側の気分なり、環境なり、時間と空間の設定の如何によって違った写真の像になると思うのです。お袋が目眩するほど見入ったのは、何十年ぶりかで出会った小学校時代の少女の姿(お袋の…)に、どっぷりと、遊んだわけで、「記憶の炎」が点火されたのでしょう。外国なんかの映画や、絵画、写真で、部屋に家族写真が壁なんかに所狭しと飾られているのを見ますが、この国ではそんな文化は、あまり馴染みがない。それで、豪華アルバムに閉じられて、お袋は少女時代の自分に長い間お目にかからなかったのです。
 部屋の片づけをしたお陰で、そんな僥倖があったわけ。これから、気軽に「記憶」を引き出すように、手近なところに写真を置くような工夫をする一助として、葉書ファイルを利用したのです。
 なかなかいいアイディアだと思う。空になったアルバムには滅多に見ないけれど、重要な書類を貼り付けました。例えば、年金手帳とかね(笑)。送金記録、年金、医療関係の書類って結構あるのです。どっしりと、重いアルバムにファイリングすると、行方不明になることもない。一石二鳥です。その隣に『風の旅人』を並べると、迫力がある陳列になりますね。
 追記:オヤジの従軍記録のアルバムがありましたね、装幀も写真も殆ど変色していなくて、満州事変に興味のある方は、資料として一級品かもしれない。
 ★『満州事変歩兵第十連隊記念写真帖』(大正写真工芸所・昭和11年3月1日発行)
 ★『満州事変関東軍記念写真帖』(大正写真工芸所・昭和9年3月31日発行)
 図書館なり、研究者なり、ライターの方なり、必要な人に贈呈したいですね。
 もし、ご興味ある方はご連絡下さい。検討させて戴きます。
 A4で厚さ3センチですか。重いです。