第四の権力/鼠小僧次郎吉

新聞社―破綻したビジネスモデル (新潮新書)ハゲタカ DVD-BOXハゲタカ(上) (講談社文庫)ハゲタカ(下) (講談社文庫)
双風舎日乗の『毎日新聞、どうよ?』を読みました。河内孝さんの毎日新聞一社だけにとどまらず、新聞業界全体、マスメディアの招来を案じての苦言は、狭い目の前の組織防衛のみで、大局的な見方の出来ないそんなそこらの僕を含めたオヤジ連中と違って、「公とはなにか」、時として国家の行く末を真剣に論じたり、第四の権力たるマスメディアを支える新聞人たちを思うあまりの叱咤激励のはずなのに、id:leleleさんの週刊文春の記事(8月30日号)が本当なら、こんな寂しい話はない。そもそも、再版維持制度はいわば例外措置なのであり、河内さんは正論を言っているに過ぎない。
ビデオニュースドットコムでも河内さんの「あたりまえの話」がアップされましたが、どうしてこの国は、あたりまえの話が、非公式では、あたりまえとして流通しているのに、公(おおやけ)になったり、利害が絡むと、一転して、僕を含めたそんなそこいらのオヤジ連中と同じような小人的行動を取るのか、ちょいとみっともないと思います。
◆昨夜、NHKで放映されたドラマ「ハゲタカ」(全六回)を一気に通しで見ましたが、ハゲタカファンドの連中の振る舞いには、少なからず「人間の生き様の問い」がありました。勿論、ハゲタカファンドの連中は再販維持制度なんて足蹴りにするだろうし、何十年とレンズを磨いた職人田中民(さんずいへんがつきます)にしても、ものづくり一筋の職人さんたちも、再販維持制度は「自分達の誇りを傷つけるものだ」と了解するでしょう。あくまで、再販維持制度は弱者保護の規定であり、そのように守られた弱者というポジションで、どうして「ペンの力」を誇示出来ようか、僕はメディアが第四の権力として思う存分、力を発揮して欲しいのです。そのために再販維持制度、記者クラブは足枷になってはいまいか、ともかく、他の権力から美味しい餌を投げ与えられても「イヤだ!」と言える強靭さを持ちえる人がジャーナリスト足り得るのでしょう。
◆今日、「儲け話」の電話があって、90歳の老母が出たのですが、そのやりとりに感歎しました。「そんなに儲かる話なら、なんでアンタが自分の金で投資しないのか?」、「いやぁ、私は充分儲かったから、いい話なので教えてあげたいと思ったのです」、「私は今の暮らしが日々やっていければいいわけで、これ以上余分の金はいらない、アンタ儲かったのね、余分の金があるなら、電話番号を教えてくれる?私の友達でお金に困っている人にアンタの電話番号を教えてあげるから」、そして電話を切られてしまった。
◆ハゲタカの連中が何兆円と金を集めて、いや、何兆円では足りないか、何十兆円と金を集めて幸福のエンジェルとなって、東西南北、合法的鼠小僧次郎吉として、困った人に金を低利で貸したり、緊急避難で金を与えたり、そんな裏稼業をしてもらいたいですね。そういう大金持ちの道楽なら大歓迎です。
鼠小僧次郎吉にしたところで、より広い視野で泥棒さんをしていたわけで、新聞人が単なるもの書きサラリーマンなら困るわけで、サラリーマンでも別に構わないですが、そのようなサラリーマンから逸脱してジャーナリストとして羽ばたこうとする先輩、同僚、後輩がいたら、せめて、出来る限り邪魔しない度量ぐらいは持って欲しい。河内さんが、異能な人、特異点の人(ユニークな人)かどうかわからないが、社会の矛盾、病巣を赤裸々にあっけらかんに出す人は、長いスパンで見れば、この世の中には絶対必要なんです。
 せめて、メディアに携わる人たちは(ジャーナリストとしての気概を維持できる困難さを理解してあげることにやぶさかではないが、…)、科学的思考法だけは、最低限手放して欲しくない。ニセ科学を流布させることだけは、やめて下さい。m(__)m