腑に落ちたテクスト

 こうやって、僕がここで、言及した赤木智弘アーカイブ改めて読み進むと、こちらのNO.25♪の月刊『オルタ 5月号』に掲載された 赤木智弘×雨宮処凛の対談記事が、それまで、赤木さんに対して感じていた居心地の悪さが、ある程度ナットク出来た重要なテクストだったと思う。それで、この部分だけもう一度、コピペします。

雨宮 (略)年長の左翼の人なんかは、私が去年のメーデーに行って、プレカリアートのことを言うようになっても、返ってくる言葉が安倍が言うところの「再チャレンジ」とかと同じなんです。友達がいるじゃないか、働かなくても月10万円でも楽しく生きていけるじゃないか等々。なんか、貧乏人は貧乏人でやっていけってな感じで、すごい切り捨ててるんですよね。金のことなんかガタガタ言わずにもっと大義を語れ、みたいな。生活のことで騒いでいる若いやつは本当にダメだ、みたいな言い方をされたのね。それで、私も左翼が安定労働者の権利を優先して、若い人を見放した、見捨ててきたというのには、かなり憤りはありますね。
赤木 やっぱり権利を「守る」ことを前提に考えているから、口先だけ立派でも何か自分たちが不利益を受け入れるという覚悟とか全然ない。たとえば、ワークシェアリングとかベーシックインカムっていうことに対しても、左翼の人がワークシェアリングしようって言った場合、自分の仕事を譲るかといってもたぶん譲らないし、ベーシックインカムのために増税したらどうなんだって話をしても、たぶんそれには応じないと思うんですよね。
雨宮 団塊の人なんかに説教されるわけです。フリーターは企業の奴隷なんだから怒れよとか、人がよすぎるんだとか。じゃやああなたが雇う側だったらどうするのかって。そうしたら、その人すごい困っちゃてた。10分後くらいに「全員正社員にする」って言ったので、あなたの給料が下がってもいいんですね?と聞くと、黙り込んで、何にも言えなくなってしまって。その人はまだ正直な方かもしれないけど、結局自分が損をするのは嫌なんだな、というのはわかりますよね。
 労働組合でも年老いた人なんかは、派遣を入れたくないって普通に言っちゃうんですよ。派遣の若い人の権利とか言っても、あいつらダラシナイし、そんな人間の相手してらんないよ、みたいな。組合も上の人がそう言ってしまうので、助けてくれないんですよね。そういう疎外されてきた歴史が10年ありますからね。
赤木 どこで出たんでしょうね、若者やフリーターがいい加減だっていうイメージは。
雨宮 そこなんですよ……
赤木 自分はやっぱりバブル期にフリーターが登場した頃、人手不足の中で働いてもらうことを会社の側からお願いしなくてはいけなかった時代に、その時代のフリーターがたぶんチャランポランだったんだと思うんですね。それが尾を引いている気がするし、多くの人がそういう冷ややかな目でフリーターを見てますよね。自分の好きなときだけ働いてっていう。実際は働きたくても働けない、入れてもらえないってのが現状なのに。
雨宮 派遣をやってる人で、すごく正社員になりたいのに、周囲の認識は、どうせ責任を持ちたくないから派遣を続けてるんだろ、と。実際は正社員と同程度の責任を負う場合が少なくないのに、ただ給料だけは凄まじく違う。でもやっぱり気楽でいたいからじゃない、あの人は、といった済まされ方が多いですよね。気分の問題ではない、というところをわかってほしいんだけど、そこがわかってもらえない。もちろん一定数はあえてフリーターをやってる人もいますけど、夢追いながら。でもその後に、出口がないですからね。夢あきらめたあとは、死ねと言ってるような状況で。

 良くも悪くも、お二人の立ち位置が見えたテクストでした。
 >じゃやああなたが雇う側だったらどうするのかって。
 古本屋チェーンのオヤジで、昔、色々と相談にのっていた子どもたちが、何とか社会人となり、中には一部上場企業にも就職したのに、身も蓋もない市場原理に嫌気がさして、オヤジが始めた古本屋業に興味をしめして、僕も、私もやりたいなぁとリクエストがあったわけですよ。そこで、彼は株式会社として定款変更し、本気でやりたいなら、自分の持っている財産を全部供出して株を買え、金がなければ、車やバイクを持っている人は、それを差し出す。一種の「コンミューン方式」ですね。会社組織にしたから、一応、オヤジが代表取締ですが、給料はみんなと殆ど同じです。仕事も週休二日制でローテーションを組んで行い、土曜日は読書会ですよ。こんなやりかたもありますね。雇う/雇われる側を無効化するビジネスモデルです。資本制のもとでも可能なんです。
【参照】
自由フォーラム事例研究??
自由フォーラム事例研究??
自由フォーラム事例研究??
 グループで金と知恵、ない人は、熱意とか誠実さとか、カタチのないものでもいい、何かを差し出して、起業するようなことですよ。一回こっきりの映画つくり、本つくりでもいいわけ。最後に頼りになるのは、金より人ですね。知人が昔、「華僑商法100ヶ条」というベストセラーを出しましたが、華僑の人的ネットワークは恐るべきものです。結局、資本(金)や「国家」を越えていますからね、「家族」+友人のネットワークを持っている人は強いですね。