「貧困特集」(毎日新聞の記事から)

 昨日の大阪版毎日新聞夕刊『読ん得』の記事は「格差とは」で、『どうする「貧困」』の記事で岩波新書『日本の経済格差』の著者橘俊詔氏が統計を駆使して色々と分析していました。厚生労働省「平成17年度所得再分配調査結果」を引用した『世帯主の年齢別ジ二係数』や、「豊かな社会の貧困」について、昨年OECD経済協力開発機構)が出した日本向けリポート(OECD加盟先進国のうちデータのそろう17ケ国の中で、日本の貧困率は米国に次いで2位となっている。)を資料に精査した結果、
 01年時点で、もっとも貧困率の高いのが母子家庭における53%、次いで高齢者単身世帯で43%。世帯主の年齢別で貧困率が高いのは29歳の若者(25.9%)と70歳以上の高齢者(25.3%)なのです。この統計を読むと、格差が固定し、若者を見殺しにするどころか、老人をも見殺しにする事態が進行しているということが読みとれる。*1
 そして、有効求人倍率にしても05年12月から1を越えているけれど、都道府県別に見ると、07年8月時点で、沖縄県0.44、青森県0.49を始め1未満の都道府県が26もある。一人当たりの県民所得(04年度)から見ると、東京都で約456万円、次いで愛知県の約344万円、最も低いのは沖縄県の約198万円、次いで青森県の約215万円など実に5県が東京都の半分以下しかない。(でも、この統計は一人当たりとすると多いね、一世帯当たりではないだろうか?、あとで調べます。)
 それはともかく、色々なところで格差は拡大している。内閣府が発行する今年の「経済財政白書」によると大企業が配当や役員報酬を大幅に増加させているのに、従業員給与は横ばいですね。70年代以降、従業員給与の2〜3倍だった役員報酬が02年から急に伸びて05年で4.8倍にまで膨れあがっている。「労働分配率」は低下し続けている。そう言う状況の中で正社員を中心とした安定雇用層がフリーターなどの非定期雇用者達に対して、機嫌良く分け前の一部を譲り渡すことは普通のやり方では確かに難しい。赤木和智キャンペーンブログで、kanameさんの「赤木の言う再配分とは、ボクの解釈では、中間層から下へ配分するべきて、一部の上が金持ってるのはある程度は仕方ないと言ってます。格差を条件付で肯定しているワケですね。ボクもそれでイイと思ってます。赤木は格差肯定論者です。」を受けて、僕はこんなことを書いたわけだが…。

kanameさんの上のエントリーの最後の段落は、赤木さんが繰り返し言っているのに、どうも、そのことをスルーして反応している方が多いみたいですね。(1)上、(2)中、(3)下の問題で彼は(1)と「(2)/(3)」の格差は肯定して、「(2)=(3)」で中と下を溶解(流動化)しようとしているわけですよ。
そこを起点として赤木さんはイシューしている。だから、論争するなら、(2)と(3)を=というか溶解することは、実行可能性があるのかどうか、北風と太陽ではないけれど、単に戦争というネタであれ、レトリックであれ、マジであれ、視線をこちらに向けさせる効果(警告)はあるけれど、(2)の人が「はい、わかりました」と、ポケットから(3)の人に素直に差し出すかどうかということでしょう。僕はそこが疑念で、まあ、粗っぽく言えば、赤木さんは、北風路線で、僕は太陽路線かな、かって僕のブログで紹介した「風の旅人」さんが北風と太陽について書いていましたが、僕は風の旅人さんの論考に賛成ですね、
 とにかく、kanameさんの上の最後の段落は赤木論考のキモで、そこを自明として「やりとり」をしないと、先に進まない感じがしますね。党派の問題ではないのです。
 赤木さんのマニフェスト(まあ、そんなもんでしょう)は右も左もどこも言っていない、だからこそ、誤読・誤配をされるのでしょう。とにかく、(1)の富裕層を脇に置いて、(2)と(3)の再分配について考えようと言っているわけ。もの凄く単純・明快な問いだと思いますよ。ただ、その問いが時として恫喝に聞こえるから反発を生む。もっと上手に優しく出来ないかなぁ、内発的に既得権益者が差し出す装置について僕は考えたいと思っているわけです。

この毎日新聞の記事を読むと、データ的にも(2)の安定層が余裕がなくなって来ていることは間違いない。 

*1:ここでいう貧困率とは、それぞれの国の平均的な所得(厳密には「中位所得」)の半分以下しか所得のない人を貧困者と定義し、国民のなかで割合を求めたもの。リポートは、18歳〜65歳を計算したもので、日本の貧困率は13.5%。米国の13.7%に次ぐ悪さなのです。