労働・アナーキー・ユートピア 


 初出は有限責任事業組合フリーターズフリー発行の『フリーターズフリー 創刊号』ですが、単行本『無能力批評』にも掲載されている杉田俊介の「[無能力批評A]『フリーターズ』創刊号に寄せて」の一文は名文中の名文です。
 こういう一文が、アカデミズムからもジャーナリズムからも文壇からもいわばクリシェとしての「言論界」からなかなか出ないということが問題なんだと思う。
 関心を持たれた方はこの名文を読んで欲しいのですが、文中に言及されていたTHE BLUE HEARTS の「月の爆撃機」がyoutubeにあったので、張り付けしました。

 俺はこんな歌が好きだ。「ここから一歩も通さない/理屈も法律も通さない/誰の声も届かない/友達も恋人も入れない/手がかりになるのは薄い月明かり」(THE BLUE HEARTS「月の爆撃機」)。誰の声も届かず、友達や恋人の心からの愛ですら、もう心身の支えにはならない時、自分はうちのめされてると口にできない程にうちのめされている時、かろうじて俺が生きのびていくための「手がかり」となるのは、「薄い月明かり」、「この子らのを世の光に」(糸賀一雄)という無能力からしんしんと差し込む「薄い」光なのかもしれないーーでも早呑込みはやめよう。それは愛に近いとは限らない。憎しみとも言えない。無能力の光は人を幸福にも不幸にもしない。してくれない。何かよくわからないもの、樹皮や岩肌から弱々しげだが尽きず流れ続けるもの、真善美ではないが、なんともいえない流れ方で人を流れるべきまっとうな方向へおしながしていくもの……(p178)

 本日の気になるニュース:http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080622-OYT1T00730.htm

無能力批評―労働と生存のエチカ

無能力批評―労働と生存のエチカ