オヤジやアボジにとって国とは何であったのか
Dear Pyongyang - ディア・ピョンヤン [DVD]
- 出版社/メーカー: video maker(VC/DAS)(D)
- 発売日: 2007/07/08
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僕のオヤジは召集兵として満州事変に参加したわけですが、下士官として除隊しました。延べ十年ぐらい戦場にいたと思う。少なからずオヤジのアイデンティティの深いところに戦場体験があったと思う。戦後、戦友達とよく会っていたし、旗日になると必ず、玄関先に日の丸と掲げた。商売に失敗して尾羽打ち枯らしても、日の丸を掲げた。そして40過ぎてサラリーマン生活を始めたのですが、声をかけてくれた人が戦友であった。
僕は梁英姫監督のアポジを見ていると段々とオヤジに似てくるのです。だからと言ってオヤジが在日の人達に好感を持っていたかと言えばまるっきり正反対だった。商売に失敗して大阪に来て住んだ長屋は鶴橋の近くでした。
商売に失敗した呉もコリアンの人達が沢山いました。学友にもいたから、猪飼野近くにあった府立高校に転校になっても全然違和感がなかった。商売をやっている時も取引先、店員、お手伝いさんでコリアンの人がいたから、オヤジも身近に接していたはずだのですが、何故、あのような憎しみを持っていたのかいまだにわからない。
だけど、この映画を見ると、アポジが娘の監督にアメリカ人と、日本人と結婚するのは絶対許さないと強い口調で言ってしまうシーンを見て、オヤジと似ていると思いました。
監督のアポジも僕のオヤジも国が内面化している。理屈ではないのです。先々月、オヤジの遺品を整理して従軍手帖、勲章や軍刀を大事に保管していたのには驚いたが、勲章などは「ピースおおさか」に寄贈、軍刀は警察に持っていって廃棄処分にしてもらいました。
この映画は、僕にも<極私的>に訴えるものがありました。父と子の物語の秀逸な映画です。劇場で見るべきだったと悔やまれます。様々な在日コリアン映画がありますが、ドキュメンタリーであるけれど、この映画ほど僕を感動させたものはないです。