希望は、累進課税

良い死

良い死

http://business.nikkeibp.co.jp/article/money/20081001/172356/?P=1
このニッケイの記事を読むと、中国も大きな曲がり角ですねぇ。やはり、基本は内需拡大ですよ。
そのためには働いている人々も働けない人々も安心して消費できるようにしなくてはいけない。
◆胃の大きさには限界がある。無理するとメタボになって、医療業界を潤す。
 昨日、外資系の生命保険会社から営業の電話があって、入院保険なんかの勧誘をするわけですよ。
 僕はどうしても信用できないから、対面ならいつでも会ってあげると言ったら、対面営業が出来ないんですねぇ。
 ア○○ジャパンなんですが、僕が一番訊きたいことは、アメリカのみならず、グローバルに皆保険システムを構築することを保険会社が運動すべきだと、言いたいわけです。
 例えば、入院して大部屋に入れば、公的な扶助を受けられる。どうしても個室に入りたい人のために民間の保険会社と契約を結ぶ。僕は大部屋の方が大好きだから、入院保険に入る必要性もない。月の高額医療で大体6万円ぐらい越えれば還付がある。その公的扶助のシステムをもっともっと低くするロビー活動を保険会社がやって、そんな平等な医療はイヤだという「やかまし屋」の連中だけから高い保険料を徴収して稼働するビジネスモデルを作るべきだと思うのです。
 こういう話は電話ではなかなかできないから、どこかで会わない?って訊いたわけですw。
 ところで、このブログを書きながら膝の上に保坂和志の『小説、世界の奏でる音楽』の5章「ここにある小説の希望」を開いています。その中で岡田利規の『わたしの場所の複数』から、パソコン会社で電話サポートをやっている派遣社員とクレーマーさんとのやりとり「多対多ーー意志の不在」をクレーマーでもあった保坂さんがその「カフカ的」状況を指摘する。

 ブログを書いているarmyofmeさんの電話応対すべてモニタリング=監視されているのだが、監視しているリーダーたちも、「コールセンターの経験を一年以上積んだオペレーターの中から選ばれているだけのフリーターであって、別に正社員ではない」。
 自分の話を書いたとき、私はついーーしかし、この「つい」は致命的だーークレーマー対オペレーターの一対一の構図を書いてしまったのだが、この小説は徹底的に多対多の構図になっていて、意志らしきものはどこにもない。
 確かにクレーマーは自分の気持ちを訴えつづけているが、それがオペレーターたちにとっては大勢の一人であることを十分に自覚しているし、「あなたの本心を聞かせてくださいよ」と泣き落としみたいに言われて、つい言ってしまった「いえ、そんなことはないです」というarmyofmeさんの言葉にしても、状況に誘導されただけで?意志?と呼べるほどのものではない。(P208)

 多分、僕はいじわるな対応をしたんだと思う。「クーリングオフ」もしたことがありますからねぇ。だけど、信頼の拠り所が環境(システム)だけでは、僕の心は動かないのです。まあ、全く興味のないことには、対面をしたくないけれど、少しでも興味のあることに関しては関係者に対面ないし取材をしたいと思うわけです。まあ、そういうことで長電話になりました。
 そうそう、本題は「内需拡大」でした。セーフティネット、インフラがしっかりすることが大事だというのは当然です。ベーシックインカムも検討に価する。
 僕は聴かなかったけれど、大阪の「とよなか国際交流センター」で立岩真也さんが「楽観主義者になる」と言う演題で講演したんですねぇ。
 当日、参加した人からの報告を聴くと、「累進課税」について喋ったと言う。
 90年代以降、金持ちから税金を取る率を少なくしてきた。こんなことをやっているのはアメリカと日本だけである。これを90年代初頭の水準まで戻せば年間20兆円のお金が得られるそうです。まあ、その通りだと思う。内田樹が今回の金融危機で、アメリカが率先して「分配しかしない最小国家」に大きく舵取りをすれば、アメリカも何とか生き残ることができるけれど、そうでなければ、沈没するでしょうと書いていたが、再分配のキモは「累進課税」でしょう。内田樹ブログの10月11日記事「ア連」(アメリカ社会主義連邦)は、 そんな累進税率で再分配を果敢に行う最小国家としての社会主義連邦でしょう。日本も無縁ではない。そしてそのようなアメリカは「移民」が担う。と内田さんは書いていたが、経団連、本日、「定住移民の受け入れ」を発表するらしいですねぇ(毎日新聞10月13日付け記事)。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081013-00000009-mai-bus_all
 定住化が前提でしょう。出稼ぎなら、内需拡大にならないというわけでしょう。移民法も改正して国籍も簡単にとれるようにするそんな方向性なんでしょう。
 経団連と立岩さん内田さんの動機は違っても、何とか内需拡大に持って行こうとする方向性は同じだと思うのです。
 切羽詰まって公的資金導入なんて愚の骨頂です。日常的に累進税率で課税をすれば、バランスのよい金融システムが稼働する。 税金をとんでもなく多く出す人に喜んで「勝ち組」の勲章を与えてもいい。でも、政治の場面においては清き一票ですw。
 高額所得者にどんどんリスクの高い投資を促し、結局、破綻させて公的資金導入よりは、どうせ、投資で消えて行くお金なら、(結局、去年から今年にかけて、この国で失ったお金は100兆円以上でしょう)。
 累進課税で税金を徴収し「最小国家としての政府」が上手に再配分して、より多くの人々の需要を喚起させる。この方法が最も最適な内需拡大でしょう。
 立岩さんの『私的所有論』をこの国や世界の再生のために傾聴すべきでしょうねぇ。国家による再分配(徴税と福祉)です。
 あたりまえと言えばあたりまえですが、再配分は言うや易し行い難しで、有無を言わさず強制力を持ってやるとなると「国家」しかないわけです。どうせ、暴力装置を駆動させるなら、こういうシーンで発揮すべきでしょう。強制力を持たない民間でやれないことを国家が果敢にやる。民間でやれることは国がやる必要がない。それが、「分配しかしない最小国家」でしょう。
 とにかく国は「再分配」のみに集中する。それが暴力装置を背景においた国のお仕事であろう。
 ところで、「累進税率を戻せ」という話の詳細は『ニーズ中心の社会福祉へ』(上野千鶴子・中西正司編)に掲載されているとのことです。立岩さんの新刊『良い死』(筑摩書房)という本も読んで見たいです。
 「文科系トークラジオ Life」の9月28日では再分配・累進課税についてまっとうなことを喋っています。
 内需拡大には金持ちにカネをばらまいても拡大しない。貧乏人にカネをばらまけば、そりゃあ、衣食住で買いたいものは沢山ある。需要が伸びて景気が良くなる。とても単純でことです。
 日本のタンス預金が30兆円あるでしょう。 その30兆円が表でまわり累進課税で20兆円となると希望が生まれますねぇ。

希望について

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