マルコム2.0

マルコムX自伝』(河出書房新社1993)は読書論、ネット論としても使える。
無知の涙 (河出文庫―BUNGEI Collection)宮本武蔵 全8冊   吉川英治歴史時代文庫シリコンバレーから将棋を観る―羽生善治と現代ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)アメリカの黒人演説集―キング・マルコムX・モリスン他 (岩波文庫)

読書が開いてくれた新しい視点のことをよく考える。私がまさにこの獄中で知ったことは、読書が永久に私の人生を変えてしまったことだった。今日ふり返ってみると、読書は私のなかに長いあいだ眠っていた思索的に生きる欲求を呼び覚ましたのだ。しかし、大学が学生に社会的地位をあたえるための学位のようなものを求めたのではない。そのほかの読んだ本とともに独学によって、私はアメリカ黒人を悩ませつつある、耳はきこえず、口はきけず、目も見えないという病いを痛切に意識することになった。最近、あるイギリスの作家がロンドンから私に電話をかけてきて質問した。一つは「出身校はどちらですか?」だった。「本です」と彼にいった。黒人の助けになると思われるもので、私が勉強していないものをみつけようとしても、十五分かけてもできないだろう。(p233)

id:soneakiraさんの集合知は衆合痴? - うたかたの日々@はてなを読んで、梅田望夫さんの苛立ち、ため息、嘆きを憶測してみたが、WEBに対する期待値が大きかったのでしょうね。
マルコムXノーフォーク犯罪者コロニーの図書館で、本を借り寸暇を惜しんで読み続ける。かって、宮本武蔵もそうだったし、近いところでは永山則夫ですか。
でも、刑務所に入らなくとも、土蔵に閉じ込められなくとも、パソコンが一台あれば、「知の宝庫」にアクセスして叡智のシャワーを浴びて勉強できるはずだ。だけど、どうやら、「集合知よりは衆合痴」で阿呆度を進化させている傾向はあるよね。自戒を込めて…。
>一つは「出身校はどちらですか?」だった。「本です」と彼にいった。
果たして自信を持って「ネットです」と、言える日本語のWeb空間が到来するであろうか。
少なくとも図書館は集合知の根拠地であるが、Webがそのようなデータバンクになる道のりは遠く、迷走するのでしょうか。

マルコムXはイライジャ・ムハマドを知ることで、世界を知ることになるわけだが、「本」は彼にとって依代(賢者の石)なわけで、恐らく梅田望夫さんにそのようなWeb2.0界での説教師の役割を様々な人は求めたのではないか。
しかし、そのような説教師になるためには、「狂気」がないと覚束ない。逃げないでそのような役割を引き受ける人が初期の段階では色々いたけれど、いなくなったということではないか。マルコム2.0になれる人がこれからWeb界に登場するかと言えばわからない。