延命の9月

久しぶりにまっちゃんさんが、ブログを更新しており、この夏は色んなことがあったんだなぁと思いやりましたが、そうだ、今日は9月なんだ。

http://www.nicovideo.jp/watch/sm1372810
夜会バージョンは
http://www.youtube.com/watch?v=OYODJOtcG3M
歌詞:http://www.uta-net.com/user/phplib/view_0.php?ID=53879

更新されたたけくまさんの記事を読むとこれは出版業界だけの話ではなく、他業界も似たような状況だとつくづく思う。もちろん、それでも順調にやっているところもあるでしょう。
今年でがん患者になって10年以上の延命を続けたことになるわけですが、1998年がんが発見されたとき、すでにリンパ節に転移しておりステージはD-1だったので、それこそ「末期の眼」(川端康成を気取って)で世界を眺めていた思考のクセがついていたみたい。
なのに、あっさり、医者としては成功例にカウントされる5年の生存を勝ち取り、10年もクリアしたわけですが、だけど、医者から「完治宣言」はもらえない。あくまで「延命」なのです。
一応、PSAの数値から言えば、去年から「再発宣言」をもらい、医者も試行錯誤で色んな処方をしているのですが、最終的にはがんと共存して生きる(延命)しかないとは思う。
がん小説『キュア』の作者、田口ランディが、小説トリッパー2009年春号に『蛇と月と蛙 その4「青に帰す」』で友人の柳原和子について書いているのを読んだのですが、田口さんを通して柳原さんの壮絶な闘いを知るにつけ、柳原さんの『がん患者学』を購入して棚にあったのに、とうとう読むことが出来なかったことを思い出しました。ランディの小説は読めたのです。
癌に関する本は結構読んだのに、当事者として書かれた闘いの本は患者としてはどうしても避けたくなるところがあるんだと、改めて思いました。
彼女の最後の連載手記は『YOBU ヨブ』だったんですね。
本当に「末期の眼」を 自分のものとしているのなら柳原さんの癌に関する一連の著書を通読出来るはずだ。よく考えたら『がん患者学』は僕が通院している大学病院の図書室に寄贈していました。でも病院の本棚に開架されていないなぁ。がんに関する蔵書は結構寄贈したのに、病院側も色々事情があるのでしょうか、バックヤードの保管しているのでしょう。
まあ、この柳原さんの『がん患者学』は名著だから図書館で借りることが出来ますから、別段支障はないのですが…。小説トリッパーのランディさんの論考で、引用すれば、

「柳原さんは、薬害エイズ訴訟を取材したことにいまだにあるこだわりをもっているみたい。その時のことをよく話すの。患者遺族から「あなたになにがわかる?」「あなたは何者なのだ?」そんなふうに、部外者として拒絶されたことが、ずいぶんショックだったみたい」/私がそう言うと、自らもHIV被害者である友人は頷いた。「そうなんだよね。彼女は当事者の苦しみをなんとかわかろうとするタイプだね。被害者やっているといろんなジャーナリストと会うけど、ジャーナリストには二つのタイプがあるんだよ。当事者の苦しみには到れないと、はっきり線を引くタイプ。あんたが苦しんでいても俺は飯が食える、はっきりとそう言うジャーナリストもいる。そのほうが仕事はしやすいだろし、他人の苦しみがわからないのは当然で、わからない、というところから出発していくしかないと思うんだ。逆に、当事者の苦しみがわからない自分を責めて、なんとかわかろうと苦悩するタイプがいる。ジャーナリストとしては、どっちがいかわからないが、僕個人としては、後者のタイプに人間としての愛着というか、哀しさを感じて好きだな。柳原さんは、絶対に後者のタイプだね」/どきんとした。私はどうだろうと思った。私は前者のタイプだ。他人の痛みも気持ちも絶対にわからないと思っている。それをわかろうとすることは傲慢だとさえ感じている。だが、最初から諦めているのは卑怯ではないか。なんとかわかろうともがき、拒絶され、どうしてもわからないという絶望の果てに到達「わからない」という境地ならともかく、きわめて単純に「わからない」と線を引いていいものだろうか。p536

多分、僕はランディさんに近い前者のタイプだろうなぁと思う。だけど、そういう前者のタイプが当事者のポジションを取らざるを得なくなった時、どんな右往左往をするかを僕自身ちゃんと対峙しなくてはいけないなぁと、思ってはいます。患者というマイノリティのポジションをクールに見つめること。
僕が、がん患者になった時、ダンナと一緒に見舞ってくれた女の人がいたのですが、全くの健常者で僕を励ましてくれました。
だが、突然、彼女がガンでなくなったことを去年知りました。友人達は誰も彼女がガンだったということを知りませんでした。ダンナが言うのには彼女は絶対内証にしてくれとの言明で葬式も身内だけでしたということでした。数年前検診で癌が発見されたのです。僕より若く、あまりにも早過ぎました。僕のようにガン告知されると、みんなに吹聴するヤツもいるし、黙って自分の中に抱え込む人もいる。
吉田拓郎中島みゆき:永遠の嘘をついてくれ (つま恋2006)