日垣隆/秘密とウソと報道

秘密とウソと報道 (幻冬舎新書)

秘密とウソと報道 (幻冬舎新書)

久しぶりに日垣隆の本を読んだがとても面白かった。
とくに「空想虚言癖」の典型的パターンはなるほどだなぁと思いました。
『司法精神医学と犯罪病理』の中谷陽二さんによると、「空想虚言癖」の特徴は4つにまとまる。
(1)語られたストーリーはまったくあり得ないというものではなく、真実の基盤の上に築かれている。(2)ストーリーは持続する。(3)ストーリーそれ自体は私益のためではないが、自己拡大(self-aggrandizing)の性質を持つ。(4)反論されると、それが偽りであることを認め、その点で妄想と異なる。

《世人が関心を持つ話題を繰り広げ、自分と聞き手がともに興じること、座談の主役を演じることに何よりも意味があり、聞き手の反応から醸し出される<乗り>が快楽をもたらす。(略)語られる内容の真偽性には一義的な重要性はない。虚構か現実かという二者択一ではなく、両方の世界をーーなかば意識し、なかば無意識にーー行き来できるところに空想虚言者の特異な能力がある。》-p98-

こういう空想虚言癖者にひっかかるジャーナリストが結構いることに驚いたが、「金儲け」や、政治・信念に基づく「正義」とか、そういう目的が可視化していれば、その目的のための手段として方便なんだろうと逆に眉に唾して警戒するのでしょうが、
それ自体が目的化して自己表現化するとしたら、やっかいですねぇ。

 空想虚言の人は、冗談ともつかないしゃべり方をする。その結果、本気で話を信じる人を周囲に引き寄せることになる。ウソの話を他人にしゃべっているうちに、自分自身も本気で信じてしまう、そのため話の内容には、やけに説得力が出てくるのである。(p99)

 小説家(特に物語作家)に似ているところがあるのではないかと思いました。そうでないとリアルなものは立ち上がらないもんねぇ。
 こういう視点から「小説家とジャーナリスト」を対比して論じたら面白いと思う。