宮台真司/治療でがんが進化する(中川恵一)

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2011年4月28日: Mekong河巡りそして棚田三昧 2
原発に関する放射性物質の取扱いの技術がどの程度進歩するものか、それともそもそもウランそのものを取り扱わないで核融合だけできれいな原子力エネルギーを取り出すことができるのか、*1素人にはわからないが、少なくとも現在、抗がん剤点滴が現象的には腫瘍マーカー的には効いている。だけど視点を変えれば厄介な問題を孕み、より耐性の強いがん細胞を突然変異として進化させる。
★「治療でがんが深化する」(中川恵一『がんの練習帳』p157)

 どれほど大きいがんでも、たった一つの「不死細胞」が分裂を繰り返して増殖したものなので、がん細胞はみな同じ遺伝子を持っています。しかし、細胞分裂の際に起こる「突然変異」が積み重なると、もともと同じ遺伝子でも性質の違いが生じてくるのです。
 がんの治療を始めた場合、その治療に「弱い」がん細胞は生き残れず死んでいきますから、がん全体の大きさも小さいくなり、腫瘍マーカーの数値も下がります。しかし、中にはその治療に「強い」がん細胞もあり、屈することなく生き残ります。
 たとえば、最初にAという抗がん剤を使うと、Aに弱いがん細胞は死にますが、Aに負けないしぶといがん細胞は生き残ります。この細胞にもうAは効かないので、別の抗がん剤Bを投与すると、同じようにBに強い細胞がまた生き残ります。二つの抗がん剤治療のあとには、AにもBにも耐性を持っている遺伝子が生き残るというわけです。
 このように異なる抗がん剤で治療を重ねるほど、弱い細胞は死に、強い細胞ばかりが生き残って、がん細胞はどんどん鍛えられていきます。同じようなことは、放射線治療でも起こります。がん細胞は、厳しい環境でも「一族の誰か」が生き残るよう、突然変異によって多様性を身につけたり、治療によって自然淘汰を繰り返したりしながら、「進化」していくとも言えるのです。

*1:私は人間が生み出す技術の力を信じている。(核分裂を利用する今の原発と違って放射性廃棄物を残さない)核融合の技術が40年もすれば実用化されると信じているし、そのための研究は必要だ。だが、何千年も放射線が残るウランなど核物質を扱う現代の原発はやはり危うい。−毎日新聞2011・4/26 建築家レンゾ・ピアノ「再生への視点」