核処分場



いま、各地で、フィンランド放射性廃棄物・最終埋蔵処分施設「オンカロ」に迫るドキュメンタリー映画「100,000年後の安全」(09年、原題「into eternity」)をやっている。宣伝なしの緊急公開だが、配給元の予想を上回る反響で、連日満員の盛況という。
 オンカロは世界で唯一、現実に建設が進む使用済み核燃料の最終処分施設である。エネルギーをロシアに頼るフィンランドにとって原発は安全保障上の選択であり、廃棄物永久埋蔵の国民合意に達した。
 だが、高レベルの放射性廃棄物が無害になるまでには10万年の歳月を要するという。かつて、それほどの時間に耐えた建造物はなかった。戦争、内乱はもとより地殻変動や洪水が起きないと誰が言えるか。
 第一、数百年先の文明、言語さえ想像を超えている。埋蔵物の危険を子孫にどう伝えるか。やはり、無理な計画ではないのか。カメラは執拗(しつよう)にこの主題を掘り下げてゆく。
 日本は使用済み燃料の再利用循環(核燃料サイクル)と、その過程で出る廃棄物の最終処理をめざしているが、道筋はついていない。不確定という点でフィンランドよりはるかに無責任な状況なのに、大量の使用済み燃料を吐き出している。それでいいのだろうか。

毎日新聞コラム山田孝男「風知草」暴走しているのは誰かより
風知草 - 毎日新聞