アイロニーな患者

◆血液検査のPSA数値が前回よりアップしている。変動のなかった数値が、ホップ、ステップ、ジャンプと変動すると、グレイゾーンの数値より低いと言っても、いや〜あな感じ。前立腺癌細胞が100%男性ホルモンに依存しているわけでなく、性ホルモンに依存していない癌細胞もあるわけです。例えばそれが30%なら、その少数派が性ホルモン依存の細胞と入れ替え戦で、知らぬ間に交代っていうこともあり得る。その反映がこの数値のかすかな上昇カーブでないかとの読みなのです。素人判断の誤読ならば言いのですが、今度、又専門医の読解を訊きに明後日、別の先生に予約を入れました。数値でまず経過観察の読みをするのです。
◆担当医に何故、先生でなく別の先生の診断を仰ぐのですか?って訊きましたら、その先生に前立腺癌のデータが集中的に集まるシステムを作っているから、一般的な判断がつきにくいときはその先生に診断してもらうことになっているという説明でした。こういうシステムが良いのか悪いのか、視点を変えれば違った判断になると思います。「普遍は特殊に繫がっている」、結局は、「特殊」の先生を信じることが出来るかどうかでしょう。信じれば、それが「普遍性」を帯びるって言うことでしょうか。
◆『無痛文明論』の森岡正博の「無痛文明」は「無痛文明的なものを越えるには、徹底して無痛文明的であるほかない」という理解があるのでしょうか。勿論、中途半端な徹底では端から無痛文明を享受する虚無性をカムフラージュする言説と誤読されかねない。ただ、徹底した無痛文明的な振る舞いとはと考えあぐねると、僕の貧困な想像力では、定点が見出せない。
『日常・共同体・アイロニー』で宮台真司

この牢獄を乗り越えるにはどうしたらいいか。このときに、いかにもローティーらしいアイロニカルな物言いが出てきます。「アメリカ的なものを超えるには、徹底してアメリカ的であるほかない」「近代的なるものを超えるには、徹底して近代であるほかはない」。(122頁)

と言ってしまうその意味は

アイロニストは一見すると不真面目なこんにゃく野郎に見えても、実際には<世界>をまじめに観察する人です。だから、ロティーさんも仲正さんも、ついでに私も、とてもまじめです。むしろ滑稽さは、超越が内在に対応してしまい、全体が部分に対応してしまう、この<世界>のあり方にこそある。それに気づく者がアイロニストなんです。(123頁)

ぼくもアイロニストだなぁ、少なくともアイロニカルな男だと思う。ただ、その徹底さが不安定である。腰が据わっていないという自省は常にあります。森岡正博はそのような意味でのアイロニストかどうか、…。
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