小林秀雄/7/17記(旧ブログより移動)

◆暑さにうんざりしながら、糾す森の近くにある『ただすの森のハリネズミ』というおもちゃ屋さんに行って来ました。自然を素材にした素朴玩具で中々楽しめる店でした。買い物を済ますと、店の人が下鴨神社の「足つけ神事」、=みたらし祭=があると言う。御手洗川に足をつけて無病息災を祈る行事なのです。蝋燭を用意して灯明をしてきました。裸足になって川に入ると冷たさに驚きました。糺の森は表通りに比べ、三度も気温が低いらしい。それでも、暑い。出町柳に出ると鴨川で子供達が水遊びしていました。川沿いをくだって、二条通りまで歩いて川風にと思ったが、暑くて堪らぬ。無風なのです。そうそうに諦めて、川端一条から大文字を正面に東大路通りまで向かう。京大の学食で食事をしても良かったのですが、そこまで辛抱できず、街の喫茶店のランチサービスの何の変哲もない店に入る。ヒレカツ定食、ドリンク付で750円。安いので、どうせ、珈琲は拙いだろうと思ったら、予想に反して美味しい。最近、熱いコーヒーは飲んでいなかったのですが、有名店に負けない。びっくり。新聞、週刊誌、マンガは一杯あるし、クーラーはがんがん効いているし、ママはどんどん、冷たい水を補給してくれるし、居心地が良い。腰をあげたくなくなりましたが、久し振りに京都府立図書館に行こうと、又、歩き出しました。京大を左手に東大路通りを下って、京大病院のトイレを借りて、岡崎公園へと向かいました。府立図書館でビデオを観るつもりだったのに、暑さでいつになく利用者が多い。待つことを余儀なくされると訊いて、兎に角、座りたい。視でなく、聴の方なら、空いている。それで、リストを見て、145分の二卷組の小林秀雄講演「現代思想について」をテープで聴くことになったのでした。冒頭、隠居について英語では何と表現するのだろうと、英語に詳しい友人に尋ねたら「ジェントルマンでしょう」と答えたが、日本で言う「ご隠居さん」とは随分、違う。「陸沈」という言葉があるが、ぼくはまあ、市井に陸沈するご隠居さんだと、言ってみたりするので、え!と思ったら、この講演は小林秀雄59歳の時なのです。赤いちゃんちゃんこの話もするし、落語の枕ですね、芸になっている。
◆あっという間に小林秀雄の語り口に引き込まれた。「心と身体」について語り、まるで、これは茂木健一郎の「クオリア」だなあと、思うが40年前の講演なので、茂木さんはまだ、生まれていない。いやギリギリかな?ベルグソンフロイト山鹿素行伊藤仁斎本居宣長など、「直感と分析」、「インテリと責任」、「科学と哲学」、等、質疑応答も交えて145分を存分に楽しむことが出来ました。ちっとも、古くない。一人だけで聴くのが勿体ないと思いました。テープなので、読書会や勉強会の前振りとしてみんなで聴くのも一興かと思いました。ラジカセで大丈夫なんだから、CDを始めとしたかような講演集、講義集をピックアップしてテキストに使うのはどこかで、やっているのだろうか、参加したいものです。映画会のノリでやれば良いのですから、徳川夢声の「銭形平次捕物控え」でもよい。これは、NHKからテープが発刊されている。NHKのアーカイブセンターも映像だけでなく、声のデーターバンクもあるのでしょうか?市民大学講座で聴いてみたかったのって、ありますね。現代思想について―講義・質疑応答 新潮カセット文庫 小林秀雄講演 別巻