田中康夫/ヤッシーラビット

◆大正生まれの老母は田中康夫が好きだ。「おまえや、小泉純一郎と違って言語明瞭だ」と言うのです。典型的なポストモダンの作家であっても、彼は政治家として振舞う時は反論が困難なほど、論理明晰なメッセージを用意する。bk1で「戦後政治を考える」という特集を組んでいるが、吉田茂岸信介、池田隼人、佐藤栄作田中角栄などに並べて、田中康夫を紹介しているのには驚いた。僕自身が書いた二年前のレビューなので、もう一度読み直して、この二年、ヤッパ、田中康夫は「この道」を歩いて、リングで変らず闘っているんだと、再認識しました。

[……]この本で書いている内容はすごく当たり前の事であり、浅田彰と共著『新・憂国呆談』でも、気勢をあげているが、少なくとも言葉(公約)と行動とを一致させようとする「したたかな度胸」は彼にはある。彼の政治行動はすごく判りやすいのだ。それは彼が言葉を大事にしているからだと思う。政治家も言葉が武器のはずである。文学者であれ政治家であれ、ローマのキケロになろうとする位の気概を持って欲しい。公開の場(生の現場)で言葉を闘わせ事によって、政治が生まれる。 それを最低限のモラルとしている政治家なら、どんな思想、宗教の持ち主であれ、信を置くに足りる。彼は結局、その事だけを述べているのだ[……]ー「『田中康夫主義』“目覚まし時計は鳴った、そしてゴングが鳴る”」よりー