広河隆一/四十年、還暦の紛争ジャーナリスト

広河隆一が立ち上げた月刊誌『DAYS/japan』は幸先よくスタートしたみたいですね。通常かような雑誌は大手の取次で取り扱わず、通販と直に頼らざるを得ないが、リアル書店で購入出来ました。「一枚の写真が国家を動かすこともある」、「人々の意志が戦争を止める日が必ず来る」、本誌のスローガンである。同じ高校だった僕は転校生だったので、同学年ながら長いこと彼が同窓生だと知らなかった(ちなみに、前の高校は旧制中学ですが、田中小実昌と同じ)。にも拘らず、彼のメルマガ“ヒロ・プレス”に登録してロムしていたのです。うかつと言えば、うかつ。四十年ぶりに大阪に住み始め、押入れの奥に高校の卒業アルバムを発見して、広河隆一を確認したのです。そのアルバムの編集委員が彼の名前になっているのです。そう言えば、著者の履歴で通常、大学の名は記すが高校の名前は載せないですね。コミさんの自伝で個人的に面白かったのは“旧制呉一中”当時のエピソードが描かれ、例えば、“予餞会”なるものを僕も体験したという懐かしい思い出でした。ぼくは舞台で先輩女子学生が踊る“ベリー・ダンス”に興奮し、やっぱ、高校生は大人なんだと、妙な感動をした覚えがあります。ちゃんと、ヘソが見えるブルー(四十年以上前なのに色までインプットされている)の衣装で、その自由な校風に驚いたものです。でも、翌年は六十年安保でその夏、広河のいる高校へ転校したのです。その境界線に樺美智子さんが亡くなった六十年の六月があり、夏休みを挟んで、九月の秋を迎えて転校したのです。武田徹BBSからの孫引用ですが、ジャーナリストの常岡浩介氏の日記サイトにこんな記述があったと紹介している。

もっとも優秀な記者は誰か?ロバート・フィスクみたいにオピニオンで勝負する記者か?辺見庸みたいに流麗で詩のような名文・美文を操る記者か?広河隆一みたいに、人道支援活動やジャーナリスト団体運営にがんばる記者か?いや、私たちにとって重要不可欠な情報を取ってくる記者だろう……

武田徹はここで、「闘っているのはただの市民だ」と言う情報をもたらしたのは、世界で安田くん、渡邊さんだけだと言明する常岡浩介に対して、武田徹は書く。

これを読んで既視感を覚えた。これはベトナム戦争の時のハルバースタムと同じ論法だ。ベトナム戦争共産主義者自由主義者の戦いではない。植民地支配から逃れようとするベトナム市民と植民地主義アメリカの戦いなのだ。ハルバースタムはそういった。その見方は一面の真理であった。確かにベトナムで戦っていたのは共産主義者だけではなかった。そこを指摘したハルバースタムの仕事は評価されてよいし、必要不可欠な情報をもたらしたと言える。だがその一方で共産主義者がそこにいなかったわけではなかったし、北ベトナム正規軍の早い時期から戦闘に加っていたのも事実だった。それが後にサイゴン陥落後にベトナム軍がカンボジアに進行する流れに繋がってゆく。そこを思えばハルバースタムもまた一面的であった。イラクベトナム化が指摘される。しかしジャーナリズムもまたベトナム戦争報道を繰り返す必要はない。見方を単純化し、図式化することに抗う重要性をこそ、過去の戦争報道史から学ぶべきではないか。フリーか、大手メディアかという二分法に明け暮れだして、それぞれがそれぞれに単純な戦争観を代表するようになってゆくのは建設的ではない。

広河隆一について書くべきところ脱線が多すぎました。悪しからず。やはり、書き難いのです。『デイズ・ジャパン』をどうぞ、購入してやって下さい。来週の8/17火曜日の“徹子の部屋”に黒柳徹子と出演するとの情報が、たった今、ヒロプレスのメルマガで送信されました。
『写真記録パレスチナ1』♪『DAYSjapan』