アホでマヌケなマイケル・ムーア

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◆映画『華氏911』を総括すれば、他の国の人々は、この映画でブッシュが嫌になったかもしれないが、肝心のアメリカ国民はこれによって、ブッシュ像が粉砕されたわけでなく、「やっぱ、ブッシュだ」とナットクして許容したのではないかという危惧です。弱さも含めて、それぞれが、「ブッシュのような生き方」をしたい、したかったという欲望システムがアメリカ国民の根っこにあるのではないか、そのことを問わないと、ブッシュもムーアもアメリカ国民も予定調和的に共犯者として、それぞれの役割をこなしているという構図内部の出来レースに見えてしまう。ムーアの映画文法が、本もそうですが、表面的に過激な言葉を使いながら、かようなアメリカの欲望システムの解体には向かわない回路が維持されている。だって、二年前に読んだ本『アホでマヌケなアメリカ人』(柏書房)は新しい発見がありましたが、『華氏911』は、その当時の彼のメッセージを「やっぱ、ムーア」と、再確認するだけでした。そこを突き抜けて欲しい、「ブッシュを、自国の欲望システムを」憎むようなコードを彼に要求するのは酷であろうか。でも、それをやるかどうかを問うのが、表現者の美学であると信じる。勿論、この映画は評価しますけれど、ぼくはそれ以上のものをマイケル・ムーアに期待しているのです。結局、自分は例外でない加害者意識と対峙する振舞いが大切かと思います。

◆追伸:7/16記(旧ブログより移動)
?田中字:華氏911とイスラエル?のメルマガが届きました。丁度、マイケル・ムーアの『華氏911』は公開が迫っているのでブリーフィングとして読んだんですが、ムーアに全幅の信頼を寄せて鑑賞したら、ひょっとして、「ムーアの謀略に陥る」危険もあり得ると、田中さんらしい捻った批評の眼を提供してくれている。この映画はブッシュ一族/サウジアラビア王室/ビンラディン一族が石油利権にからみ、サウジと親密なブッシュ大統領がそれを隠そうと試み、アメリカ国民の目をそらすためにイラク戦争を始めたと示唆する。でも、日本でも良く知られている「ネオコン」がこの映画では等閑視されている。ブッシュに替わって大統領候補のケリー/ネオコンイスラエルのラインに、結果としてこの映画は利することになるのではないか?確かにアラブの線を攻撃するのは間違いではないが、その返す同じ刀で、ネオコンイスラエルを斬り付けていないのは片手落ちではないか?そんな批評の眼を田中さんは提供してくれている。映画を鑑賞する前にイスラエルも含んだ中東問題のマッピングの中で基本的な勉強はして置くべきでしょうね。パレスチナ問題はイラク戦争の底流にあるのですから…。