久世光彦/美味しい美の職人

“退屈男”さんのブログに触発されて、久世本で、一番、楽しんだのは『卑弥呼』ですと、コメント欄にカキコしたのに、bk1で覗いてみると、単行本も文庫も品切れ絶版?になっている。データが出なかったはずだ。しかし、勿体無い。大長編であるけれど、サービス精神旺盛のエロチックな衒学、教養小説で、しかし、全然、鼻につかないどころか、抱腹絶倒する。○○ん子さんを全国津々浦々で何と呼ばれているか、博物検証したり、熱烈恋愛の若い二人は哀しくもメイク・ラブ出来ず、その問題解決に旅立つのですが、おばあちゃんは、中原中也を朗読して、身体の欠如を補完(何のこっちゃぁ…)したり、随分前に読んでいるので、ストーリーはうろ覚えで、確認しようにも、もう本棚には『卑弥呼』がありません。そう言えば、他の本は古本でも、結構、見つけることが出来ますが、この本は見かけませんね。僕的には、オススメですね。新潮文庫の『花迷宮』、『早く昔になればいい』、『一九三四年冬―乱歩』…などのライナップを念のため開くと変換に苦労する漢字が一杯ありますが、昔ながら、ふんだんに“おくりがな”をつけています。久世さんは、クリシェ(紋切り型表現)を意識的に文体に取り込み、そのパッチワークの妙で久世美学を織り込んでいるのだと思う。その職人芸を楽しむことで、久世本に登場する様々な人々が曼荼羅に生きてくる。近代文学とは違うのです。でも、演歌でもないなぁ…。昭和初期ロマンのジャパネスク、郷ひろみの歌かな、今、CMで流れているみたいですね、ジャ、パァ〜ンって、久世光彦演出のテレビドラマは、よく観ましたね。
#『退屈男と本と街』