トマス・ピンチョン

 読了するまで、とんでもなく時間がかかりました。通常なら、途中でヘタりそんのまんまっていうことになるのですが、わき道に入りながらも何とかメインストリートに戻ってこれたのも、原著では数倍もオモロく読めるのであろうなというイラダチを伴った屈折したピンチョンに対するリスペクトです。
 翻訳者佐藤良明の懇切丁寧な訳注・連邦警官ヘクタの大阪弁と、翻訳の敢闘ぶりの凄さがひしひしと、伝わるのですが、その熱意とぼくの想像力の貧困さなのであろうが、大阪弁のヘクタは“横山やすし”に完全になってしまい、「これ、やっさんじゃないか、」、そればかりか、連邦検察官ブロック、日本人たけしは、二役の北野たけしと、くの一忍者のDLは某女優だと、身近に見知りの日本の人の顔を自然と思い浮かべてしまったのは、翻訳の力なのか、でも、これ、逸脱した翻訳ではないか、やっぱ、原著にあたらないと、ダメではないか、そんな戸惑いを覚えたのです。
 そんなこともあって、感想を述べるに逡巡しました。それで、ネット上に「新潮1999年3月号」にアップされていた作家・星野智幸の書評を紹介します。『ここ』です。交通整理した内容紹介もやってくれています。うーん、わかる、村上春樹のように星野バージョンで翻訳したら、是非とも再読したいと、思いました。
 翻訳者・佐藤良明があまりに、目立ちすぎる。作家として目立つのなら、ハルキの、ホシノのピンチョンとして了解するのですが…。それで、佐藤良明って何者なんだろうと、bk1で検索したら、こんな新刊がありました。著者レビューも書いている。⇒『これが東大の授業ですか。』 です。いや〜あ、色々演出している。佐藤良明制作のPRビデオまであります。佐藤教授はパフォーマーなんですね。柴田元幸との共著『佐藤君と柴田君』(新潮文庫)も面白そう。  ヴァインランドヴァインランド佐藤君と柴田君 (新潮文庫)これが東大の授業ですか。