毎日、ママチャリを乗っています

メセナひらかたの多目的ホールで、ドキュメント映画♪自転車でいこう♪を観ました。監督:杉本信昭で、大阪市生野区平野川、中川沿いから、鶴橋、今里、布施あたりを舞台に、軽度の知的障害をもつ自閉症の20歳の青年が平野川沿いにある福祉作業所の営業担当で、自閉症であっても、ある日、突然、饒舌に喋り初めた在日韓国人李復明(リ プーミョン)君は自転車で町を駆け回る。高校の時、引越し先が中川沿いで、もう40年前の大昔ですが、僕にとっても懐かしい街をプーミョンは、街の人々に話しかけ、彼独自の「ことばあそび」とも思える語りと擬音は、カメラを無視した天衣無縫の自然体で、プーミョンのキャラが映画を観る観客の笑いを誘っていました。自閉症だったからなのか、今ではだれかれかまわず「家、どこー?」って話しかける彼は、街の人から「プーミョン」と呼ばれ親しまれている。彼と街の人々とのズレてしまうこっけいな会話が笑えるのです。

僕も十代の後半をこの街で育ったので、40年前とそんなに変わっていない街の風景に人情に驚いてしまった。プーミャンが自転車の修理をやってもらう自転車屋のオッチャンも四国の中学校を卒業してふらりとこの街にやってきてそのまま、自転車屋に住み込んで小僧から、店を持ち、もう五十年も住んでいる。たこ焼き屋のオバチャンも同じ場所で35年も商売を続けている。撮影は2000年らしいが、たこ焼き屋のメニューが4個100円になっている。安い!今、ぼくの住んでいるところでは、6個300円です。

それはさておき、プーミョンは色々な人々と関係を築いていくが、営業成績は最悪で、全然売れない。阿倍野近鉄百貨店前の歩道橋で日曜出勤してTシャツの出店を出して呼び込みまでやるが、あんまり売れない、今日も映画終了後にロビーでプーミャン君がTシャツを2000円で営業をしていたが、売れたのであろうか、この街は変わっていない、そのことに一番、驚きました。重度障害者の晋君が気に入った街は桃谷であったが、先日、桃谷に住んでいるYに会ったら、この間、杖をついて脳梗塞でこれから病院に行くつもりだが、お金を忘れてしもうたと、脳梗塞に罹ったにしては大きな声ではっきりとYに金を貸してくれと声をかけてきた。そのお爺さんはこの近在では有名らしい。俺に声をかけたのは、7回目、このあいだはおまわりに声をかけていた。「オレは言ってやったよ、ちゃんと顔を覚えておけ!」って、「先日は車椅子のオバチャンに声をかけて怒鳴られていた」「あんた、いままでなんぼ、かせいだんね」って。でも、その爺は平気で、この街を流しているらしい。初めての人はおまわりさんを問わず、善意で小銭を与える。そんな街なのかな…。小さな公園ではYの話では将棋、マージャンをささやかにやっているグループがいるらしい。大体、200円ぐらいの金しか動かないんだ。それで、みんな結構楽しんでいる。

監督の杉本信昭さんは、「人とつき合うことを恐れない勇気を、撮影を通して生野から学んだ」と話ています。この街では、バブル期でも時はゆっくりと流れていたのかと、平野川、中川を行き来するダルマ船のエンジン音を聴きながら懐かしく思いやりました。ウルフルズ“あそぼう”♪がテーマーソングです。115分のドキュメント映画としてはエンターティメント度も申し分なく、プーミャンの面白さが自転車もろともこちらに向かって疾走してくるハードなリズムを感じる。この映画の主題歌もいいですね。