クリスマスになると、

年末になると、リアル書店を覗いても児童絵本コーナーが気になります。ぼくが現役の担当者なら、画像のような陳列をしてしまうでしょう。西岡兄妹の『花屋の娘』等、他の作品は公式ホームページで御覧下さい。特に“大きな栗の木の下で”は“葉っぱ虫”のキャラにぴったんこです(笑)。 【こうちゃん】については、今春こんなことを書いていました。かようなビクトル・エリセの映画『ミツバチのささやき』を思い出してしまう詩画集にコメントするのは、気恥ずかしいが、爺は“迷い子こうちゃん”と呼ばれていました。須賀さんの文は1960年で、1966年生まれの酒井駒子さんの画はこの本を上梓するために画き下ろしたものでしょう。そのタイムラグを超えて、ふたりの主役が共鳴し合っている。まさに『ミツバチのささやき』(シネマ日記)です。耳をすまし、眼をこらし、静かに読む本です。

灯のきえた洪水のあとの村を、私はひとり あるいて いました。冬がくるというのに、稲は一年中の苦心といっしょに、あとかたもなく ながされてしまって もう誰ひとり、どう生きて行っていいのか、わからなかったのです。ふと そのとき どこからか、 あの ためいきに似た こうちゃんの声が くりかえし くりかえし こう きこえてきました。
「ああ ほんとうに あなたは いったい どこにいるのですか」

気がつくと、あのとおいところをみつめるような眼で こうちゃんは じっと私をみあげているのです。あわててなにか言おうとする私をさえぎって、こうちゃんは ぽつりとこう言いました。
 ね、どこから来たの?

こうちゃん、灰いろの空から降ってくる粉雪のような、音たてて炉にもえる明るい火のような、そんなすなおなことばを、もう わたしたちは わすれてしまったのでしょうか。

中村びわさんが素敵なレビューを書いています。 【=本のシャワーにさらす肌=】↑のbk1にも中村さんは書いています。