野球小僧が花咲爺になった

NEW BESTONEたまものアラキネマ 花曲3 [DVD]
退屈男さんのブログを覗いたら、何と『野球小僧』のことを書いている。いや〜あ、懐かしい。恐らく僕が生まれて初めて口ずさんだ真っ当な楽曲、

野球小僧に 逢ったかい/男らしくて 純情で/燃えるあこがれ グランドで/じっと見てたよ 背番号/僕のようだね 君のよう/オオ マイ・ボーイ/ほがらかな ほがらかな/野球小僧

灰田勝彦『野球小僧』ではないかと思いましたが、そうではありませんでした。そうではなくて、あの『写真時代』、『パチンコ雑誌』と、風俗雑誌の陰にこの人ありと言われた言われている『白夜書房』・末井昭さんちの雑誌ではないか?エロ、ギャンブル、から、『月刊誌・野球小僧』にジャンプしたんだと、やっぱし世のなかは動いているんだと、変な納得の仕方をしました。でも、灰田勝彦末井昭とくれば、末井の現夫人の写真家神蔵美子が前の旦那坪内祐三とのツーショットを撮った(末井昭/坪内祐三がチアガールに扮したらしい)◆写真を哀しみを堪えて収載した写真集『たまもの』(筑摩書房)を発刊したのですが、発売当時、気になってチェックしていたのですが、いつの間にか忘却の彼方になったみたい。そのこともあらためて思い出し、そうなれば、当然、かような複雑な人間関係図に荒木経惟が一枚加わり、彼の花のスライドショーを見るもことも出来るアラキーHPを久しぶりに訪問しました。数年前、京都で開催されたアラキー展覧会にも行きました。bk1にも本のレビューを書いている『花淫』(でも、品切れ)が、同じように花をエロチックにスライドショーで捉えているDVD『アラキネマ・花曲3』はジュンク堂京都店で購入して持っています。すごく猥褻な花のショーです。

私情が花情に溢れて死情と生情のエロトス(アラーキーの造語でエロスとタナトス)写真である。詩情を求めて、四条通祇園にある荒木経惟【花人生展】に行って来ました。実は前から予定していたのだが、失念していたのです。偶然、bk1で12月の美術館情報(かようなサービスを提供しているのを知らなかったのです)を見つけ、「あ! そうだ。アラーキーの花写真展があったのだ」と思い出し、まずはbk1に感謝です。『何必館京都現代美術館』で今月25日迄です。アラーキー「花淫」を語るによれば、=花を最初に本格的に撮ったのは、70年のはじめ、アタシが生まれ育った三ノ輪の浄閑寺だった。お彼岸のころって花がいっぱいお供えしてあるじゃあない。それを1,2週間待って、枯れかけを撮る。墓守と仲よかったから、「片付けないでくれ」って話つけて、白いボードをいろんな墓の前に立てかけて、白バックにして、枯れかけの彼岸の花を撮りまくった。=(183頁)私はアラーキーの女の写真には欲情しないが、花の写真には欲情する。多分、アラーキーの女は文学性、物語性が過剰でこちらのタマは堪えきれず逃げ出したくなるが、彼の花は花であるが故に残酷な楽しみ方も出来るのか。異端の接写で窃視する。カメラの眼によって、「事」となった花は迷惑な話であろう。知らぬ間に、アラーキーと視姦の共犯者になっていた。言葉にならない花のうめきが聞こえる。アラーキーの花のスライドショーはホームページの『色情花』で堪能出来る。DVDも発売されているが、この本が一番、手軽で花情を共有出来る。

◆とまあ、こんなことを書いているのですが、続きを読みたい方は“ここ”をクリックして下さい。彼の花の原風景は浄閑寺彼岸花で、安政の大地震の時、新吉原の遊女たちが[投げ込まれて]葬られた供養塔の台座には「生きては苦界 死しては浄閑寺」と刻まれている。アラーキーの生家はこの寺の斜向かいらしい。菩提寺ということなので、アラーキーはこの花の写真で自分を夢埋葬したのかもしれない。西行の花の下に死なんの桜と違って、薔薇かチューリップ、牡丹、バナナの花とかで、西行なら墓の下で「勘弁してくれ」と、うなされるだろう。【うたごころ】がないのかと。だけど、そういうところが、彼がドイツ等で評価されるところかもしれない。桜の写真もあります。でも西行とまでもいかなくとも、小林秀雄の桜とも違う。彼自身がコメントしている。「桜だってちっとも清純じゃない。おどろおどろしい花、桜はいちばんの裏切り女だね」。坂口安吾の『桜の森の満開の下』(講談社)の花に近いのかな。『かぶきこころ』の花なんでしょう。