メトロポリスからアジールへ

モモ―時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語 (岩波少年少女の本 37)はてしない物語 (上) (岩波少年文庫 (501))先生はえらい (ちくまプリマー新書)CSR入門―「企業の社会的責任」とは何か (日経文庫)
『先生はえらい』がヒット上昇中らしい内田先生のブログを訪問したら、関西大学高槻市に30階建ての高層ビルを建て、幼稚園から小中高校、新設学部、大学院を新たに開設する構想を発表したことに対してコメントしている。ぼくもこのニュースにはびっくりしました。何せ、淀川を挟んで真向かいの街にかような『メトロポリス型学校』が出来るのですから、ちなみに僕の住む街も、去年、松阪屋が撤退したが、別の百貨店になり、周辺の商店街はリニュアール工事中で来月末にオープン予定。映画館も出来るらしい。◆まあ、これは歓迎すべきことなんですが、市の図書館が移転する。関西外語大学の旧キャンパス内に広いスペースで中央図書館としてオープンするのです。それならば、蔵書も増え、大学側からも大量に寄贈されるのでしょうねと、訊いたら憤然と否定されました。蔵書どころか、電球一個も残さず持って行きましたって…。ぼくはバスに乗ってまで行くぐらいなら、大阪、京都の図書館に行ってしまう。結局、旧関西外大に移転する市中央図書館は利用しないでしょうね。近場の駅前にある小さくて、汚い図書館のネットを活用して取り寄せる。九割方はそれで間に合う。その小さい図書館の傍に41階建ての高層マンションが建っているのです。
◆だから、淀川を挟んでこの高層ビルが互いに見つめ合う構図になる。それにしても大学ビジネスも囲い込みが一段と加速していったのか、社員/フリーターの二極化を“eireneさん”は問題として取り上げていましたが、教育界にもその波がもろに押し寄せてきたということでしょうが、内田先生の説は勝ち組、負け組みの二極化はお互いに不幸な事態になるという見通しである。安心、安全が脅かされる危険な社会になる可能性が高くなるだけでなく、いわば、勝ち組は垂直方向に、学びも居住も結果として追いやられ、セキュリティと空調の完備された快適な?高層空間で生きていくわけだ。果たして勝ち組が欲していたのがそんな世界だったとしたら、羨ましいともなんとも思わない。
◆9.11のニューヨークテロがより身近くなり危険度がアップするわけ。確か世界の保険協会で、精査した結果、東京が最も危険なコストのかかる街になったみたいですね。そういう状況で、「少子化」を声高に叫んでみたって、説得力がない。処方箋はあるのだろうか、ある。僕を含めて六十歳を超えた人は隠居する。そんなことは無理だよと、笑わないで下さい。「還暦になれば、働かないことが美徳」であるとの社会的コンセサスがあれば、随分風通しのよい社会になると思います。ぼくの周りの同輩、先輩は、あまりにも元気が良すぎ、欲望度もデッカイ。
◆それなのに、欲望度の少ない、他者に関心を持たない若者が増えすぎ、益々二極化が進行している気がする。だから、若者達が表に出たがらないのなら、僕ら年寄りが裏に引っ込む。単純な処方箋です。まず年寄り政治家が実践して欲しい。「われわれは、もう働かない」、働かないことを言明することは思想が必要です。そんな思想を還暦になったから持てと説教するのは不遜ですかね…。せめて、掛け持ちはやめてもらいたいですね。経営者がNHKの何とか委員会の委員になって高い報酬を貰うと言った慣行が多すぎる。せめて無報酬のボランティアでやってもらいたい。
◆それが困るなら、例えば、収入の少ない、大学に籍をもっていない、兼業をしていない、文学一筋の小説家に委員になって貰いたい。まあ、思いつきで書きましたが、方向性は間違っていないと思う。要はパイを合理的に知的に戦略的に分配することです。夢物語ではないと思いますが…。少数派による富の独占は自らを囲い込んで、安全安心という高層ビルを駆け上る。時間奴隷となった垂直思考はミヒャエル・エンデの『モモ』に哀れんでもらえるかもしれないが、とても住み心地がいいとは思わない。
◆「アジールへ…」、世界はこんなにも拡がっている「大空へ…」、空間思考は手放したくないなぁ…。